農作物技術情報 第3号 水稲(令和2年5月28日発行)

ページ番号2000180  更新日 令和2年5月28日

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  • 好天時は、浅水管理で水温・地温を高め、初期生育を促しましょう。
  • 目標とする茎数を確保したら、すみやかに中干しを実施しましょう。
  • 除草剤は、イネ・ノビエの葉齢を確認し、適期を逃さず処理しましょう。
  • 取置苗はいもち病の伝染源になるので、直ちに処分しましょう。
  • 斑点米カメムシ類のふ化盛期に合わせ、地域一斉の草刈を実施しましょう。

1 生育概況

(1)移植時の苗は、4月の低温の影響で、北部を除いて草丈がやや短めとなりました。また、全般に乾物重が小さ
く、北上川上流・北部を中心に、充実度は平年をやや下回っています(表1)。
(2)田植えはまもなく終期となり、概ね適期内に終了する見込みです(表2)。5月19~22日頃の低温の影響で活着の遅れもみられましたが、向こう1か月の予報では当面、気温は平年並~高く推移すると予想され、これに伴い生育も次第に回復していくと見込まれます。

表1

表2

2 水管理(分げつの促進と中干しの実施)

(1)分げつの促進
ア 晴れ~曇天の日、気温の高い日は田面が露出しない程度の浅水 (3~5cm) とし、分げつの発生を促します(図1上)。
イ 最高気温が概ね15℃以下の低温時には、葉先が出る程度の深水とします(図1下)。特に田植え後間もないところでは、活着や初期生育を促すようきめ細かな水管理をしてください。
ウ 冷水のかかる水田は、アゼ波などを利用して積極的に水温の上昇をはかります(図2)。
エ 以下のような場合は、稲を健全に保つため、水の入れ替えを行ってください。

  • 藻類が多発する水田
  • 水持ちが良すぎる場合(1回の入水で7日以上持つ水田)
  • 生わら施用田など、早期に還元化が進んでガスが発生する水田(表3)

図1、図2

表3

(2)中干しの実施
ア 目標とする茎数が確保されたら中干しを行いましょう。中干しは土壌の還元化を和らげ、根の伸長促進と健全化をはかり、無効分げつの発生を抑制します。
イ 県内の主要うるち品種(ひとめぼれ、あきたこまち、いわてっこ等)の目標茎数は、6月下旬に400~500 本/平方メートル程度(坪60株の場合、株あたり22~28本)を目安とします。
ウ 中干し期間は7~10日程度とし、田面に小さな亀裂が生じ田面を軽く踏んで足跡がつく程度を目安とします。
エ 潅水や排水を容易に行うため、中干しとあわせて作溝を行うとより効果的です。
オ 中干し終了直後は間断潅漑とし、その後常時湛水とします。以後は低温でない限り、幼穂形成期までは間断潅漑とします。

3 効果的な除草剤の使用

ノビエやホタルイなどの水田雑草は、好天の影響で平年よりもやや早い発生となっています。
除草剤を散布する場合は、効果を十分に発揮させるため、下記の点に注意します。

(1)散布時期
雑草の種類や葉齢を良く確認して、散布適期内の早い時期に散布します。
なお、除草剤ラベルに記載された散布晩限のノビエ葉齢(例:~ノビエ2.5葉まで)は、平均葉齢でなく「最大葉齢」ですので、適期を逸しないように散布してください(図3、写真1)。

(2)散布後の水管理
十分な湛水深を確保してから除草剤を処理します。散布後3~4日間は水を動かさず、7日間は落水・かけ流しをしない管理としてください(この間、田面を露出させないこと)。

(3)使用する農薬のラベルを必ず確認して、使用基準を遵守してください。

図3、写真1

4 病害虫防除対策

(1)葉いもち:補植用取置苗の早期処分対策
ア 水田内や畦畔際に放置された取置苗は、いもち病の伝染源になる恐れがありますので、直ちに処分してください。
取置苗をよく観察し、葉いもち病の発生を確認したときは、水田内の葉いもち病発生状況を観察します。
イ 葉いもち予防の水面施用粒剤施用時期は6月20日~25日が適期です(移植時にいもち病予防箱粒剤を施用した場合は必要ありません)。例年、葉いもちが早期に発生する地域ではこれより7日程度早めに施用してください。
ウ 葉いもち予防水面施用粒剤を施用する前や箱施用剤を使用した場合でも、圃場をよく観察して葉いもちの発生が見
られた場合には、直ちに茎葉散布を行います。

写真2

(2)斑点米カメムシ:発生源対策(5/28更新予定)
ア 斑点米発生の原因となるアカスジカスミカメは、イタリアンライグラス等のイネ科牧草や雑草の穂などで繁殖しま
す(写真3、4)。
イ アカスジカスミカメは卵で越冬しますが、越冬卵のふ化(卵がかえること)盛期の前後5日間に畦畔等の草刈りを
行うと、越冬世代幼虫の密度低減に効果的です(平成19年度研究成果)。
ウ アカスジカスミカメ越冬世代幼虫のふ化盛期は、平年並の予測です。表4の予測日を参考に地域全体で草刈りを行
い、アカスジカスミカメの密度低減に努めてください。

写真3、写真4

表4

5 直播栽培(鉄コーティング種子による湛水表面播種栽培)の本田管理

(1)本年の出芽状況と本田管理のポイント
ア 本年は、播種後の気温が平年より低く経過しており、苗立ちはやや遅れています。
イ 苗立ち後、一発処理除草剤を散布する場合は、稲とノビエの葉齢に注意し、適期を逸しないように散布してください(農作物技術情報第1号参照)。
ウ 本田管理は、基本的には移植栽培に準じて行います。なお、出穂は移植栽培に比べ7~10日程度遅くなることから、防除や追肥の計画は熟期差を考慮して見通しをたててください。

(2)中干し
ア 県内の主要うるち品種(ひとめぼれ、あきたこまち等)の目標茎数は、6月下旬に400~450本/平方メートル程度(坪60株の場合、株あたり22~25本)が目安です。
イ 中干は登熟期の倒伏を抑制する効果もあるので確実に行います。

(3)病害虫防除

ア 葉いもち病防除
(ア)殺菌剤の種子処理、または播種時土中施用・側条施用が基本です。
(イ)(ア)の防除が未実施の場合は、いもち発生を見逃さないよう圃場をよく観察し、発生が確認され次第、茎葉散布での防除を行います。

イ 初期害虫防除(イネミズゾウムシ、イネドロオイムシ)
(ア)殺虫剤の種子処理、または播種時土中施用・側条施用が基本です。
(イ)(ア)の防除が未実施の場合は、害虫の発生状況をよく観察し、発生が確認され次第、殺虫剤の水面施用による防除を行います。

ウ 穂いもち病防除
出穂直前と穂揃い期の2回の茎葉散布を基本とします。

エ 散布する薬剤の選択
それぞれの病害虫に適用登録のある薬剤から選択します。
一部飼料用米や稲発酵粗飼料(稲WCS)では農薬の使用に制限がありますので、不明な点は最寄りの農業改良普及センター等に御相談ください。

フッタ

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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