農作物技術情報 第3号 果樹(令和2年5月28日発行)

ページ番号2000176  更新日 令和2年5月28日

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  • りんごの発芽・展葉は平年より10日程度早まりましたが、開花は、4月中旬以降の低温の影響で、満開期で平年より2日程度早く(概ね平年並み)なりました。開花期間中、降雨はあったものの、気温は平年並みから高めで経過し、例年の結実は確保できたと推察されます。ただし、4月中下旬の低温で、地域や品種によっては凍霜害が見られますので、結実の状況を慎重に見極め、できるだけ良質果を残すよう摘果を進めましょう。
  • ぶどうの生育は、4月までの低温の影響で、発芽期、展葉期とも平年よりやや遅くなりました。しかしながら、今後の気温の推移により生育は影響されるので、計画的に開花期前後の管理を進めましょう。

りんご

1 生育概況について

(1)開花期の状況
定点観測地点の調査結果(表1)から、「ふじ」の開花始期は県平均で5月4日と、平年より2日早く、前年並みとなりました。また「ふじ」の満開期は県平均で5月8日と、平年より2日早く、前年より1日遅くなりました。今年の特徴として、高温となった5月3日前後に開花始めとなった県南と沿岸では落花までの期間が短くなり、それ以降に開花期を迎えた県中北部では、気温が概ね平年並みに推移したため、落花期までの期間が県南・沿岸部と比べ長くなりました。

表1

(2)結実の状況
開花期間中は降雨があったものの、気温は平年並みから高めで経過し、例年の結実は確保できると推察されます(図
1)。
しかしながら、4月中旬以降の低温の影響で、品種により果梗が短い、おしべ、めしべが欠落しているなど凍霜害の被害が確認されています。したがって、地域や品種により結実率がバラつく可能性もあります。また、結実してもサビ果や奇形果の発生が懸念されるので、慎重な経過観察と良質果を収穫するために摘果の吟味が重要です。

図1

2 摘果について

(1)早期摘果の重要性
開花後1ヶ月位までは主に貯蔵養分で生長し、その後根や葉の生長に伴い当年の同化養分で果実や新梢、新根が生長するため、早期の摘果で貯蔵養分の消耗を少なくすることが、果実の初期肥大を促すためには重要です。
また、早期の摘果によって種子(ジベレリンを分泌し、花芽形成を阻害する)を減らし、花芽分化を促進することも、隔年結果を防止し安定生産を図るうえでは非常に重要です。
これらと図2からも解かるように、今年の果実肥大と来年の花芽確保のためにも、早期のあら摘果が大切ですので、満開30日頃までには一回りあら摘果が終了できるよう、品種構成や労力等に応じた作業スケジュールを立て、計画的に摘果作業を進めてください。

図2

(2)摘果の留意点
ア 最初に、1果そう1果とする予備摘果(あら摘果)を実施します。その際、不要な果そうの果実を積極的に除いていきます。その後、果実肥大や品質を確認しながら仕上げ摘果を進めます。
イ 摘果終了の目安は表2の通りです。今年の落花期は概ね平年並みだったことから、落花30日後は6月15日前後になります。作業を計画的に進め、早期摘果を心がけてください。
ウ 三角実や扁平果など、果形の悪い果実、病虫害果、傷果を中心に摘果していきます。
エ 果実は横の発育が良く、果硬が太くて長い正形果を残します。
オ 果台が極端に長いもの(25mm以上)や短いもの(10mm以下)は、斜形果の発生割合が高くなるので、できるだけ摘果します。

表2

(3)凍霜害発生園地における摘果の要点
凍霜害の発生した園地では、さび果、奇形果などの障害果の発生が懸念されます。摘果作業は被害様相が明らかにな
り、結実を確認してから行います。また、結実しても、サビ果や不正形果が多くなりますので、予備摘果は多めに残
し、仕上げ摘果でよい果形のものを残すように吟味してください。また、中心果が被害を受けた場合は、果形、肥大が良好で障害が少ない側果を利用します。
なお、仕上げ摘果の終了時期は、翌年の花芽確保のため、過度に遅れないよう注意してください。

3 病害虫防除について

(1)昨年来、発生が目立っている黒星病や褐斑病、昨年の発生は少なかったものの密度が高くなると防除が難しいハダニ類など、今後これらの発生動向には十分に注意が必要です。病害虫防除所が発行する発生予察情報を参考に防除を進めてください。
(2)6月は斑点落葉病など様々な病害の感染時期です。梅雨期は週間天気予報などを活用し、降雨の合間を捉えて、散布間隔が空き過ぎないように防除を実施してください。
(3)黒星病については、他病害との同時防除を兼ねて、本病に効果のある予防剤を定期的に散布してください。その際には散布ムラがないように十分量を丁寧に散布します。また、降雨が予想される場合は、降雨前に散布を行ってください。なお、落花10日後以降のEBI剤の散布は、耐性菌が発現する恐れがあるので行わないでください。さらに、園地を見回り発生が確認された場合は見つけ次第、発病葉(図3)や発病果(図4)を摘み取り、土中に埋めるなど適正に処分してください。苗木など未結果樹での発生にも注意し、成木と同様に薬剤防除を徹底します。
(4)ハダニ類は気温の上昇とともに増える可能性があり、新梢葉で寄生葉率が30%に達したら、速やかに防除を行ってください。

図3、図4

ぶどう

1 生育概況

紫波町の定点調査地点の観測によると(表3)、4月中旬以降の気温が低く経過したため、発芽期は5月5日と平年及び前年より2日遅くなり、展葉期も平年及び前年より1日遅くなりました。
5月中旬に一時気温が低く経過しましたが、5月21日発表の一か月予報によると「気温は高い」とされております。これから開花期にかけては管理作業が重なり忙しくなりますので、生育状況や気象情報をしっかり確認し、計画的に作業を進めて開花前の管理が遅れないよう注意しましょう。

表3

2 開花期前後の栽培管理のポイント

(1)新梢の誘引
展葉7~8枚頃に、2回目の芽かき作業に合わせて良く伸びた新梢から誘引します。

(2)花穂の整理
ア 「キャンベルアーリー」は、開花前に3穂着生している新梢については、1穂落として2穂とし、全体で目標着房数の1~2割増の着生数とします。
イ 「紅伊豆」は、最終房数は1新梢1房とします。摘房の時期は、新梢の強弱を判断して強勢のものほど摘房を遅らせ、着色期を目途に最終着房数とします。
ウ 無核化する品種では、花穂の整形と併せて摘穂を行います。摘穂の目安は、ジベレリン処理により着粒が安定するため、最終着房数の1.5倍程度とします。

(3)花振るい防止
ア 「キャンベルアーリー」は、強めの新梢を開花7~4日前に房先5~7枚の葉を残して摘心します。
イ 大粒種で花振るいが強い品種や園地では、メピコートクロリド液剤(フラスター液剤)を使用することにより花振るいを軽減(着粒増加)できます。使用する際は、品種毎の登録内容を十分に確認し、使用時期や希釈倍率に注意して使用してください。

(4)花穂の整形(図5)
ア 「キャンベルアーリー」では、摘芯作業と同時に花穂の副穂を切除し、下端を切り詰めます(尻止め)。また、主穂が長すぎる場合は上段の枝梗を1~2段切除します。
イ 「紅伊豆」などの大粒種は、1~2輪開花し始めた頃から先端部を切り詰めます。「紅伊豆」では副穂を切除し、主穂の基部から4~6段を切除して10~13段程度を残すように整形します。
ウ 「サニールージュ」では開花初期(副穂の開花が始まった頃)に副穂を除去し(長い花穂は上部支梗を1~3段除去)、花穂の長さを概ね7~8cmとします。なお、花穂の先端は切りつめません。
エ 「シャインマスカット」では開花初期(副穂の開花が始まった頃)に副穂と上部支梗を切除し、花穂の長さを概ね4cmとします。花穂の先端は切りつめません。また、花穂先端が2つに分かれ使えない場合は、第1枝梗を利用します。

図5

(5)ジベレリン処理
無種子化のため、「安芸クイーン」などの「巨峰系4倍体品種」、「サニールージュ」、「シャインマスカット」へのジベレリン処理は遅れずに行います。また、「シャインマスカット」では、満開予定日の14日前~開花始期までの間にストレプトマイシン液剤(商品名:アグレプト液剤)を散布するか、1回目のジベレリン処理時に併用することで無種子化率が向上します。
なお、ジベレリンやストレプトマイシン液剤を使用する際は、品種毎の登録内容を十分に確認してください。

(6)摘粒
ア 果粒肥大を促し裂果や病害の誘発を防ぎ、着色向上など品質確保に不可欠な作業です。果粒の大きさが小豆から大豆くらいの大きさとなる満開後30日以内に終了するのが目標です。
イ 1果房当たり「キャンベルアーリー」、「ナイアガラ」は70粒程度、「サニールージュ」は50粒程度とし、二つ折りになる状態を目安に行いますが、縦に1~2列(2列の場合は表側1列と裏側1列)摘粒する方法や段抜きなどの簡便法もあります(図6)。
ウ 「紅伊豆」、「ハニーブラック」は1果房当たり30~40粒、「安芸クイーン」は25~30粒、「シャインマスカット」は40~50粒程度とします。最上位に4粒程度着粒させ、下部に行くほど徐々に着粒数を減らし、下端は1粒となるようにします(図7)。

図6、図7

3 病害虫防除

(1)ぶどうの開花期前後は、灰色かび病の発生時期です。生育ステージに合わせて、適期防除に努めてください。なお、灰色かび病等の薬剤抵抗性回避のため、同一系統薬剤の連用はしないよう注意してください。
(2)露地栽培で有袋栽培をする場合、防除後、薬剤が乾いたら速やかに袋かけをしてください。

フッタ

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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