《奥州》江刺りんご~40年の歩み~ 岩手江刺農協りんご部会

ページ番号2000614  更新日 令和2年3月18日

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はじめに

奥州市江刺は、一年を通して寒暖の差が大きいことから、りんごに適した気象条件を生かした栽培が行われています。
江刺のりんご栽培の歴史は古く、大正時代まで遡るといわれていますが、昭和54年に旧江刺市内7農協による「江刺広域りんご選果農業協同組合連合会」として選果場が建設され、「江刺りんご」の一元出荷が開始されました。
令和元年は、この「江刺りんご」の一元出荷開始から40年目を迎える節目の年です。

全国に先駆けたりんごわい化栽培

江刺のりんご栽培面積は現在271haと県内有数の面積ですが、そのほぼ全てがわい化栽培となっています。
わい化栽培は、りんごの高品質化と管理作業の省力化等のために導入され、全国に先駆けた栽培を進めてきました。
江刺のわい化栽培は、りんご栽培農家の後継者が中心となり、昭和46年に結成された「江刺りんご同好会」の発足を契機に始まります。同好会のメンバーは、わい化栽培による大規模経営に憧れ、自らの手でわい性苗木を育成し、昭和48年には、同好会のメンバーが中心となった「小倉沢りんご生産組合」が設立されました。同年、国は全国5か所に初めて「りんごわい化栽培モデル園設置事業」を実施しますが、その一つに選ばれ、全国で最も早く本格的なわい化りんご栽培に取り組みました。
また、同時期に全国に先駆けて導入した「ジョナゴールド」は、「M.26」台木と組合せることで着色が向上し、無袋栽培を可能としたことにより岩手県を代表する品種となっています。主力品種の「ふじ」については、着色・食味が優れる系統を選抜し、全国に先駆けて導入した新わい性台木「JM7」との組合せにより、果実品質の評価を高めました。
これらの取組は、江刺はもとより県内、そして全国のりんご生産者に大きな影響を与えました。

団地先導型の産地形成

生産者、市、農協や普及センターなどの関係機関が一丸となって取組を進め、「小倉沢りんご生産組合」に続き、大規模わい化りんご団地が次々と誕生しました。
現在も7団地で集約的な土地利用と効率的な労働力の活用が図られており、当地域のりんご栽培面積の多くを占めています。りんご団地は、「江刺りんご」が全国有数の産地として、その地位を維持する上で重要な役割を担っています。

優良品種の導入

当時国内に導入されたばかりの「ジョナゴールド」は、品質や食味で高い評価を得て飛躍的に面積が拡大し、現在も当地域での主力品種となっています。
また、地元育種家高野卓郎氏が育成した極早生品種の「紅ロマン」は、りんごの流通量が少ない8月に出荷が可能であり、着色が良好で食味も優れる品種であることから、平成21年から導入を進め、部会を挙げて産地化に取り組んでいます。さらに、試験研究機関や普及センターと連携して栽培方法を確立し、「紅ロマン栽培マニュアル」を作成し、栽培技術の向上も図っています。

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品質重視の生産販売

良食味で高糖度のりんご生産を追求するため、樹当たりの着果量を制限し、着色や糖度の向上による高品質化を図っています。収穫時期についても、完熟状態での収穫に向けて熟度を見極めるため、部会役員による園地巡回を実施しています。
「ふじ」は、厳しい選果基準をクリアした良食味で高品質な果実が全国へ出荷されています。また、糖度表示を行うことで、高付加価値化を図るとともに、消費者まで「江刺りんご」の高い品質が認知されるよう、取組を進めています。

こうした取組により年々評価が高まり、令和元年に盛岡市中央卸売市場で行われた「ふじ」の初競りでは、過去最高の一箱(10kg 28個入)140万円で競り落とされました。

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毎年注目を集める「ふじ」の初競り

鮮度保持技術の導入

他産地との出荷競合による単価下落を回避するため、農協、農業研究センター、普及センターが連携して体制を整え、平成23年に全国に先駆けて1-MCP処理による長期貯蔵を開始しました。この技術によって、翌年5月までの長期出荷が可能となり、平均単価の向上につながっています。
平成24年には、急増する市場各社からの需要に応えるため、農協が1-MCP処理が可能な予冷庫を新たに設置し、全国で初めて鮮度保持技術を導入した販売体制を確立しました。

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1-MCP(スマートフレッシュ)処理用予冷庫

活発な部会活動

岩手江刺農協りんご部会(部会員114名)は、高品質果実生産に向けた技術確立を目指し、部会長を始めとする役員が主体的に活動を行っています。現在は、品種栽培班と販売班で役割を分担し活動しています。
品種栽培班は、農協や農業改良普及センターとともに栽培技術に関わる取組や新品種の選定及び品種構成の検討を行っています。販売班は、農協とともに有利販売に向け、収穫、出荷、販売に関する意識の統一、市場等に対するPR活動に取り組んでいます。
また、後継者等で組織する「青年部」は、栽培技術のスキルアップや販売促進活動を行っており、新品種「紅ロマン」販売開始当時は、都内高級スーパーでの試食販売を担当し、新品種の宣伝・消費拡大に大きく貢献しました。
女性で組織する「アップルレディース」も県内外での販売促進活動を通じて、消費者交流による「江刺りんご」ファンの獲得や消費者ニーズの把握など、りんご産地を形成していくために重要な情報収集とPR活動を担っています。

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販売促進活動(江刺りんごでトキめく!トキの日フェア)

更なる発展に向けて

岩手江刺農協りんご部会は、同好会設立以来、国内の他産地に先駆け、新技術と高品質を追求し「江刺りんご」ブランドの確立に取り組んできました。その功績が認められ、平成28年には、第18回全国果樹技術・経営コンクールにおいて、農林水産省生産局長賞を受賞しました。
また、令和元年度には、「江刺りんご」の共選共販40周年を記念し、新商品「恋桜」の出荷・流通が始まり、新たなブランドづくりに取り組んでいます。

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新ブランドりんご「恋桜」

これからも「江刺りんご」は「全国一の高品質なりんご産地を目指す」を目標に、生産面から流通面まで、部会を挙げて統一した活動を展開し、さらに発展していきます。

(文 奥州農業改良普及センター 遊佐公哉)

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