《ルポ・一関》小麦・大豆の良質多収栽培と販売に向けて

ページ番号2001902  更新日 平成26年6月19日

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一関第2地区を支える(農)アグリ平泉

写真:農地1

一関地方には、北上川流域の治水対策とともに整備された大区画ほ場として、一関第1、2、3地区があります。このうち、平泉町東部の北上川沿いに広く拓けているのが一関第2地区で、受益面積460 ha、区画面積331ha、地権者586戸の規模となっています。一関第2地区では、平成15年8月に全戸加入による長島営農組合を組織することで土地利用集積を進め、平成18年4月に構成員14名による転作作目の担い手組織・農事組合法人アグリ平泉を設立しました。現在、長島営農組合から営農委託を受けた107 haのほ場において、佐々木正代表理事のもと、小麦、大豆、加工米等を戦略的に栽培しています。

主力とする小麦・大豆の良質多収栽培

農) アグリ平泉では、107 haの広いほ場に数種類の作目を作付けることから、ほ場のブロックローテーションを取り入れ、作業の効率化、連作障害の回避、雑草害の抑制等を図っています。ローテーションは、大豆(2年)→小麦(3年)→大豆(晩播1年)→加工米・飼料米を基本とし、一部変更したローテーションの組み合わせにより、毎年、小麦56ha、大豆20haを安定的に栽培しています。
 小麦は、主にナンブコムギとゆきちからの2品種を作付け、パン用としてコユキコムギも限定的に栽培しています。肥培管理に重点をおき、倒伏軽減とタンパク質含量向上のため、追肥は融雪期と穂揃期の2回までとし、併せて、昨年導入した簡易土壌分析機による肥料散布量の調整を行っています。
 また、ほ場に排水溝と明きょを設置することで湿害対策を行うほか、赤かび病防除として無人ヘリコプターによる年2〜3回の薬剤散布と6月末の抜き穂作業を組み合わせています。
 こうした取り組みにより、平成22年産の収量は370 kg/ 10aと県平均の160 kg/10aを大きく上回り、実需者の加工適性に関する高い評価と契約数量の増加に結びついています。
 一方、気象条件の影響も受け、外観品質面で1等比率が低い状況ですが、関係機関と連携した適期収穫、JA検査員との目揃い会開催等、可能な限りの対策を行うとともに、追肥時期の見直しや初冬期播種技術の導入を新たに検討しています。
 次に、大豆はリュウホウを作付け、普通栽培では湿害回避のために小畦立て播種技術を全面導入し、小麦後作については密植・狭畦栽培を組み合わせています。中耕培土の確実な実施による雑草・倒伏・湿害の防止、ウコンノメイガトラップの設置による害虫発生予察、そして、発酵鶏ふんたい肥の施用による土作りを行っています。
 その結果、平成21年産の収量は176kg/ 10a(普通196kg/ 10a、小麦後作158kg/ 10a)、1・2等品質80%を確保するとともに、密植・狭畦栽培で培土等を省略し作業時間の短縮と生産費の半減を実現しています。
 このような小麦・大豆の良質多収栽培に向けた取り組みは、平成19年度岩手県麦作共励会奨励賞、平成21年度岩手県大豆作共励会優秀賞と評価され、県内有数産地の牽けん引者として大きな期待を受けています。

写真:コユキコムギ
県内唯一のコユキコムギ

写真:農地2

写真:幻の小麦で作った白いこゆきパン

 (農)アグリ平泉の大きな特徴として、県内唯一といえるコユキコムギを栽培し、東京・目黒のパン工房「ワルン・ロティ」及び直営「きんいろぱん屋」へ契約販売していることがあげられます。このコユキコムギは、赤さび病等の病気に弱いこと等から県内での栽培が見られなくなりましたが、風味と甘みがパン加工に適し、ワルン・ロティ代表の父親が旧東北農業試験場で開発した品種でもあり、同代表が生産者を探していた経緯があります。そこで、パンの加工販売にも取り組みはじめていた(農)アグリ平泉が栽培を引き受けることとなり、平成21年に1 haの作付けがはじまりました。
 心配された赤さび病等の病気については、通常の小麦栽培と同様の管理で抑えることができ、平成22年産は収量448 kg/ 10aとかなり高い収量を確保しています。さらに、コユキコムギで加工したこだわりのパンが消費者やメディアの大きな注目を受け、新たな目玉商品になってきていることから、今後一層の加工販売を図ることとし、平成23年産の作付面積は2.4haに拡大しています。

法人としての発展、産地としての地域貢献

主力とする小麦・大豆に加え、加工米、飼料米、枝豆の作目を適度に組み合わせ、水害リスクの分散と年間を通じた労務作業の均平化、収入源の確保を図っています。大豆後地での加工米栽培では、肥料散布量を慣行の2分の1まで減らしており、また、加工販売による農業の6次産業化を検討しています。省力化技術の導入にも積極的であり、飼料米では無人ヘリコプターによる鉄コーティング直播栽培に挑戦し、その課題等を見出しているところです。
 法人としての発展ばかりでなく、産地として地域に広く貢献することを経営理念とし、大豆の小畦立て播種栽培に係る合同研修会の開催や栽培マニュアルの作成配布等、技術の普及にも力を注いでいます。
 また、中尊寺をはじめとする平泉町の世界遺産登録の気運を高め、消費者交流と農業体験学習の場を創出するために、平成21年からは「ライス・アートinひらいずみ」に取り組み、古代米と加工米を組み合わせた「平泉」の文字を1haほ場に描く等、地域イベントとして大きく盛りあげています。
 これらの取り組みにより、今後一層、(農)アグリ平泉の安定した法人経営が展開され、全国を代表する小麦・大豆産地として大きく発展していくことを期待しています。

写真:農地3

写真:農地4

写真:農地5

写真:農地6

(一関農業改良普及センター佐藤 賢)

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