V 調査の総括
1 養殖業
(1)ワカメだけでなくコンブ、ホタテガイ(海上養殖)、アワビ(陸上養殖)等、本県の主要産品について大規模な企業的養殖を行っている
  (中国生産量/日本生産量:コンブ18倍、ホタテガイ3倍)。
(2)本県養殖業の規模を拡大する上で、季節的に大量の労働力を必要とすることが最大の障害となっているが、中国では内陸部から安価な労働力を季節的に大量に使用し、大規模な生産を行っている。
(3)養殖技術は、外国(日本等)研修、外国企業からの提供、自国研究機関の技術開発により相当のレベルにあり、更に外国の進んだ技術を吸収しようと言う意欲が非常に強い。
(4)ワカメの国内消費はまだ浸透していないため、製品は日本向けが主体であるが、ホタテガイ、アワビは国内に旺盛な需要があることから、中国の経済発展に伴い、今後、国内向けの比率が高まるものと思われる。なお、コンブは日本のIQ(輸入割当)制度の影響で大部分が国内消費であるが、これが緩和・撤廃された場合には、輸入急増の可能性があり注意が必要である。
(5)養殖生産量は増加しているが、いずれかの段階で養殖海面の制約等の理由により生産量が頭打ちとなるものと思われる。また、沿岸部の人口増加、製造業の立地により海洋汚染問題が課題となる可能性がある。
【海面養殖・採介藻類生産量の日中比較(平成11年)】       (単位:万トン)
区分 中国 日本 倍率(中国/日本) 岩手 倍率(中国/岩手)
魚類 34 26 1.3  
エビ・カニ 266 2 133.0 0  
貝類 793 42 18.9 2.2 360.5
ホタテガイ 71 22 3.2 0.9 78.9
カキ 299 20 15.0 1.3 230.0
アワビ ※1 0.2      
その他 423    
海藻類 117 56 2.1 4.9 23.9
コンブ 89 5 17.8 1.4 63.6
ワカメ ※2(21) 7.7 (2.7) 3.6 (5.8)
その他 28 51 0.5 0  
養殖計 973 125 7.8 7.5 129.7
〔資料:中国漁業局(放流・漁場造成分含む)、漁業・養殖業統計年報(養殖・天然を含む)〕
※1:数量は不明であるが、大連市の1施設で200〜300トンを生産
※2:水産タイムズ社による平成12年推定は21万トン
 
2 漁船漁業
(1)沿岸漁業は、資源量の減少により生産が低迷している。(中国の200海里は意外と狭く、日本の2割しかない。)
(2)遠洋漁業は、外国水域での規制強化の影響で今後は公海操業(カツオ・マグロ等)への依存が高まると思われるが、公海での操業についても資源の制約等から大幅な増産は困難と思われる。
【主要国の200海里面積、海岸線総延長、国土面積】
200海里面積(万km2) 国土面積(万km2)
米国 762 936
オーストラリア 701 769
ニュージーランド 483 27
カナダ 470 998
日本 447 38
中国 96 960
韓国 45 10
〔資料:海洋産業研究会資料、日本財団ホームページ、海上保安庁〕
3 水産加工業
(1)供給が安定している輸入水産物や遠洋漁業漁獲物を原料にEU(タラ冷凍フィレー等)、日本(冷凍食品等)へ輸出する加工場が増加している。外国からの投資企業が多いが、中国資本の会社も育ちつつあり、日本の加工企業も合弁会社の設立ではなく中国企業への委託生産を行う企業が増えている。
(2)外国に製品を輸出している工場は、米国HACCP方式輸出証明,EU輸出認定、ISO9000等を取得し、衛生・品質管理は日本と比べ遜色の無いレベルにある。インフラは経済開発特区等では十分に整備され、機械設備についても安価な国内製品の供給体制が発達している。一方で、内陸の安い労働力を使用でき、低コストで高品質の生産が可能であり国際競争力が強い。
(3)驚異的な速度と規模で新規投資を行う企業がある反面で失敗する企業も出ているようである。しかし、強い国際競争力を背景に、地域全体としては、外国加工企業の原料確保・市場面のシェアを奪う形での成長が続くのではないか(逆に、我が国の加工業は中国との原料確保、市場面での競合にさらされることになる)。
 
4 水産物需給
(1)現在の中国の漁業生産は毎年10%近い割合で増大しているが、水産資源、海面ともに有限であり、いずれかの段階で資源の減少、養殖海面の制約等により生産が頭打ちとなるものと思われる。
一方で、沿岸部の大都市では海産物が肉以上に高級食材であり、農産物に比べ日本との価格差が小さい。今後の経済発展、内陸部での海産物の消費の普及等にともない中国国内の海産物への需要は増加すると思われる。
(2)いずれ、中国が水産物輸入国となる可能性はあるが、現在は、輸出金額が輸入を大きく上回っている(1999年:輸出30億米ドル、輸入11億米ドル)。
【中国の水産物輸入・輸出額の推移】                      (単位:万トン)
1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999
全世界  輸出 38,917 40,217 41,178 47,322 51,719 52,797 53,420 51,188 52,883
輸入 43,492 45,255 44,567 51,309 56,119 57,258 56,661 55,084 57,493
中国 輸出 1,182 1,560 1,542 2,320 2,835 2,857 2,937 2,656 2,960
輸入 438 681 576 856 941 1,184 1,183 991 1,127
輸入/輸出 0.37 0.44 0.37 0.37 0.33 0.41 0.40 0.37 0.38
中国が世界貿易に占めるシェア 輸出(%) 3 4 4 5 5 5 5 5 6
輸入(%)  1 2 1 2 2 2 2 2 2
〔資料:国連食糧農業機関〕
 
 本県水産業の今後の対策
(1)本県水産業の中国に対する優位性は、生産性が高く清浄な海を持つこと、日本消費者との距離が近く密接な関係を作れることであり、この特性を活用することが重要である。
(2)本県水産業にとっての当面の課題は、低価格を武器とする中国からの輸入水産物に対して優位性をどのように発揮するかである。コスト削減も重要であるが、価格面のみの競争は困難であり、中国産に比べ高価格であっても消費者がそれに見合うと判断する水産物を供給していくことが必要であり、このためには、
  @ 清浄な海洋環境を維持し、これを消費者に積極的にアピールすること
  A 消費者への距離が近いことを活用して、変化する消費者需要を的確に把握し地域水産業全体(生産者、加工・流通業者)が消費者需要に応えていくこと
  B 食品としての最低限の条件として、安全性の確保を図ること(貝毒・SRSV対策、漁獲・流通・加工の衛生管理対策)が重要である。さらに、資源管理、増殖による水産資源の維持・増大も重要である。
(3)本県養殖業は、価格対策とともに生産規模拡大が必要である。日本では大量、安価な季節労働力入手は困難であり、省力化機器の開発・導入、漁場の再編等による労働生産性の向上が必要である。
(4)ワカメに関しては、中国での消費拡大が日中双方のワカメ養殖業界にとって有意義であり、日中間の協力が必要である。
(5)水産加工業については、輸入原料に依存する加工業では、他国に真似できない加工技術や消費者との強い結びつき等が無いと中国との差別化は困難であり、前浜原料を使用した地域性の高い加工品づくりが重要(前浜資源の不安定性にどう対処するのかが最大の課題)である。
(6)本県水産物の中国への輸出も考えられるが、本県はまとまった数量で安定生産される魚種が少なく安定した輸出ルートの確保が難しいこと、生鮮魚介類が中心で輸送日数をかければ本県の特性が生かせないことが課題であり、今後の可能性がある産品としては、
@ アワビ(干しアワビは現在も香港に輸出。中国での活アワビ需要は強く日本との価格差は少小さい。中国の価格が上昇すれば輸出の可能性が有る。)
A サケ(中国内にノルウェー等から養殖サケが輸入されている。餌代が不要な放流サケは価格面で優位に立てる可能性がある反面、毎年の生産が安定しないことが課題である。)
B サンマ、イカ等の多穫性魚(資源変動により生産が安定しないこと、他県との優位性が出しづらいことが課題である。)
が考えられる。

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