岩手山の活動経過(9月)

−9月3日の地震(M6.1)の前後でどのように変化したか−


 9月3日16時58分頃、岩手山の南西約10kmでマグニチュード(M)6.1の地震(以下、「M6.1の地震」という)があり、この地震による強震動をトリガーとして岩手山の火山活動の活発化が懸念されたことから臨時火山情報第4号を発表したが、噴気量の増加などの表面現象の異常は確認されなかった。これまでにその余震活動もほぼおさまっている。
 余震の多発と地震時の大きな地殻変動の影響で、火山性地震・微動の発生状況や地殻変動の傾向の把握が困難な時期はあるものの、いくつかの活動状況に変化が見られた。
 
 以上の状況から、火山活動は短期的には変化の少ない小康状態を示しているが、今後活動が沈静化し、終息する方向に向かうのか、地震の群発等を経て火山活動が噴火に向けて新たな段階に入りつつあるのかを判断することは現状では困難である。

 これらのことから、火山活動の状況には依然として注意が必要であり、厳重に監視を続ける必要がある。

 以下に、9月の活動経過の概要をまとめた。

 岩手山西側の浅い火山性地震
 M6.1の地震の前には、3日11時01分のM2.6(雫石町長山で震度1)の地震を含む十数回の地震が観測された。
 M6.1の地震後は、地震回数は少ない状態が続いているが、18日のM2.6(雫石町長山で震度2)を始め、中旬以降、やや大きめの地震が見られた。

 鬼が状付近の浅い火山性地震
 3日、M6.1の地震の直後から鬼が状付近で浅い地震が発生し始め、3日、14日には最大M2.5の地震(いずれも無感)が発生した。月後半は少ない状態が続いた。

 山頂付近に発生したと思われる震動
 3日18時28分に八合目の地震計に大きな振幅の震動が観測された。馬返しの地震計にも記録されたが、他の観測点では微弱であり、震源は不明である。3日17時31分、7日09時16分にも同様の震動が観測されたが、その後は観測されていない。

 火山性微動・低周波地震
 火山性微動はM6.1の地震の後、少ない状態が続いたが、18日から20日にかけて4回観測されるなど、月後半に回数の増加が見られた。
 山頂の東側を震源とするやや深い(深さ4〜8km)低周波地震は数は少ないが依然発生している。また、山頂の東側の火山性微動が26日と28日にそれぞれ1回観測された(7月26日以来)。

 モホ面付近の地震活動
 M6.1の地震の前後で特に変化は見られなかったが、下旬にやや多く観測された。

 地殻変動
 国土地理院のGPS観測結果によると、寄木−西山の基線は観測開始(5月下旬)からの約2ヶ月間に2〜3cm程度継続的に伸びつづけ、M6.1の地震発生時に約1cm程度縮んだものの、その後はあまり変化をしていないように見える。また、長期的に伸びの傾向であった岩手松尾−雫石の基線も、ここ1ヶ月のデータから見ると、ほとんど基線長が変化していないように見える。
 東北大学の地殻変動観測によると、M6.1の地震前の傾向に徐々に戻りつつあるように見える観測点と、M6.1の地震に伴う大きな変化の影響が残っている観測点がある。

 表面現象
 M6.1の地震に伴って、大地獄の噴気量の増加などの表面現象は確認されなかった。
 10日、科学技術庁防災科学技術研究所は火山専用空中赤外映像装置により山体表面温度測定を実施したが変化は見られなかった。
 盛岡地方気象台が実施した17日の山頂付近の現地観測の結果、地中温度(外輪山内壁)は83℃で昨年(94℃、9月10日)と比べて大きな変化はなかった。また、火口原南東部(奥宮)の噴気温度も変化はなかった。