岩手山の活動経過
(平成10年8月まで)
岩手山では、平成7年9月から岩手山山頂付近で火山性微動や低周波地震が観測されるようになり、平成10年1月頃までは、1ヶ月当たり数回程度観測されていたが、2月以降岩手山西側の火山性地震が徐々に増加した。
岩手山西側の火山性地震は、6月後半からさらに増加し、有感地震の回数の増加、火山性微動や低周波地震の発生が認められるようになってきた。このため、火山活動の活発化に注意を促すために、6月24日に「臨時火山情報第2号」を発表し、また大きな火山性微動が観測された7月10日にも「臨時火山情報第3号」を発表し、その後の状況も観測情報で公表してきた。
7月10日に振幅の大きな火山性微動が観測された以降は、岩手山西側の火山性地震の活動レベルは徐々に低下し、地震回数は8月に入って5月の水準にまで戻っていたが、8月30日には一時的に急増した。
6月下旬から観測され始めた岩手山西側の振幅の小さい火山性微動は、7月中旬に一旦見られなくなった後7月下旬から再び観測されるようになり、8月後半には回数は少なくなってきた。
7月下旬から、数は少なく規模も小さいが岩手山山頂直下でも火山性地震の発生が認められた。
東北大学や国土地理院のGPS観測等によれば、山体が南北方向に伸張する地殻変動が2月頃から観測されており、観測開始以来の伸張量は約6cmに達した。
以下に、8月までの活動経過の概要をまとめた。
(1)岩手山西側の浅い火山性地震
今年(平成10年)1月より岩手山の西側を震源とする浅い火山性地震が発生し始め、2月中旬から徐々に増加した。4月29日の15時前後には短時間に200回を超える火山性地震が発生した。6月下旬から7月上旬には、地震回数が1日あたり100回を超えることがしばしばあった。
7月中旬以降は、増減を繰り返しながらも減少してきたが、8月30日には短時間に火山性地震が多発し、139回の火山性地震が観測された。
6月頃から、岩手山の西側を震源とする火山性地震だけでなく、三ツ石山付近、葛根田付近での地震の発生が目立ってきている。8月28日には三ツ石山付近でマグニチュード3.4とこれまでで最大規模の地震が発生した(雫石町長山で震度3)。
6月下旬から7月上旬と比べ、8月はやや地震回数が少ない状態が続いたが、今年1月の地震回数(1日平均1回以下)と比較すると1日平均37回で依然として多い状態であった。
(2)岩手山西側の火山性微動
6月24日から岩手山の西側で火山性微動が観測されるようになり、6月下旬〜7月上旬、7月下旬〜8月上旬にやや多かったが、8月後半は少ない状態となった。
(3)岩手山西側の低周波地震
6月23日に岩手山の西側を震源とする低周波地震が発生した。以来、6月24日に2回、6月25日に1回、7月27日に1回、7月31日に2回、8月30日に2回発生した。
(4)山頂直下の浅い火山性地震
平成8年夏から岩手山の山頂直下の浅い部分を震源とする火山性地震が発生したが、多くても月数回程度であった。
今年に入って発生していなかった岩手山の山頂直下の浅い火山性地震は、7月から目立つようになり、8月19日には山頂直下を震源とする火山性地震としては最大規模の地震(マグニチュード1.8)が発生した。その後も規模は小さいが引き続き発生した。
(5)東岩手のやや深い低周波地震と火山性微動
平成7年9月に、山頂の東側を震源とする低周波地震と火山性微動が初めて観測されたが、その後は多くても月数回程度の状態が続いていた。
今年に入ってからは、ほとんど観測されていなかったが、6月28日に継続時間の長い火山性微動が観測されて以来、低周波地震と火山性微動が再び観測されるようになった。
今年7月下旬から低周波地震の発生が目立つようになり、やや深い領域(深さ4〜8km)を震源とする低周波地震が1日数回観測された。
(6)モホ面付近の地震活動
岩手山の北側と南側の深さ約30kmのモホ面(モホロビチッチ面)付近で低周波地震が発生している。従来は年間数回観測されるだけであったが、昨年夏から目立ち始め、今年4月以降多い状態が続いており、今年に入って100回以上観測された。
(7)地殻変動
東北大学による傾斜計、体積歪計及び東北大学と国土地理院のGPSによる観測では、今年2月以降の地震活動等の活発化にあわせて、岩手山西側で南北方向に伸びる水平地殻変動が観測されており、これまでに、約6cmの南北伸張が観測された。
(8)表面現象
今年6月中旬の現地観測によると、大地獄火口では、平成8年8月と比べ噴気温度が上昇し、噴気の勢いも強くなっていた。また、7月中旬に実施した現地観測では、姥倉山分岐付近の噴気が6月中旬よりも多く出ているのが観測された。その後の観測では、噴気の活発化等は見られなかった。