シリーズ 岩手の海に現れた珍しい魚

平成13年4月10日に釜石魚市場に水揚げされました。

標準和名:イボダンゴ(カサゴ目/ダンゴウオ科)

学名:Eumicrotremus orbis

地方名:なし

【主な特徴】

@ 体は球形で、ひれが小さい。

A 体中が眼と同じくらいの大きさの山形のこぶ状突起でおおわれる。

B 第1背びれも小さなこぶ状の突起でおおわれる。

C 腹びれは変形して大きな丸い吸盤となっている。

【その他特記事項】

体長8cm程度の小型魚。

冷たい水を好み、北海道からアメリカ北部西海岸に至る北太平洋に広く分布します。岩手県周辺では水の冷たい春先にごくまれに現れる程度と考えられます。

小型で食べられそうな部分も少なく、食用とはなっていません。

あまり泳ぐのを得意としておらず、普段は腹びれの変化した大きな吸盤で岩などにはりついて休んでいます。

 この仲間はいずれも体が球形で「だんご」の様であることから、ダンゴウオという名前がつけられています。この種とごく近い仲間に、「コンペイトウ」という種がいます。外見はイボダンゴとよく似ていますが、もう少し小さなこぶ状突起がたくさん体をおおっています。この様な姿が、我々の世代には懐かしい駄菓子の一種「こんぺいとう」を連想させることから、この様な和名が与えられています。

 

ちょっと一言【魚のヒレ】

  図鑑などで、ある魚を見定めるとき、各部の特徴が種類を見分けるカギとして使われています。しかし、これらは専門的な用語が中心なため、それを見て「フムフム」と理解できる方はよほど通な方に限られてしまうのではないでしょうか。本報では、多くの方に図鑑を利用していただくために、図鑑中で用いられる魚の用語を解説していきます。

 今回は、“ひれ”についてご紹介します。魚は、私たちとは異なり、手足がないかわりに“ひれ”と呼ばれる器官があり、水中を泳ぐのに役立っています。一般に、魚にはつのひれがあります。それぞれついている場所ごとに、胸(むな)びれ、背(せ)びれ、腹(はら)びれ、臀(しり)びれ、尾(お)びれと呼んでいます。ひれは、主に水中で体のバランスをとる役割(胸びれ、腹びれ、背びれ)と、前へ進むための推進力を得る役割(尾びれ)を担っています。一般に魚のひれは、膜とそれを支えるき条と呼ばれる細い棒のような組織から成り立っていて、うちわやせんすのようなつくりになっています。多くの魚では、背びれとしりびれの前側の一部のき条は、硬く針のようになっています。この針のようなき条は棘(きょく)または棘条(きょくじょう)と呼ばれます。これに対し、残りのひれは節のある弱々しいき条からできていて、軟条と呼ばれます。魚のグループによって、ひれの数やついている位置、き条の数が違っているため、これらが種類を見分けるための重要なカギとなる場合があります。図鑑には、「P1 10, D X, 10, A I, 5, C10」などと記載されていますが、これは「胸びれ(P1)、背びれ(D)、しりびれ(A)、尾びれ(C)のき条の数を示していて、IXといったローマ数字は棘の数を示しています。

 次頁の「シリーズ岩手の海に現れた珍しい魚」で紹介したように、イボダンゴでは腹びれが吸盤になっているほか、チョウチンアンコウの仲間では背びれの一部がえさをおびき寄せるための釣り竿のようになっていたり、コバンザメの仲間では他の魚にくっつくために背びれの一部が大きな吸盤になっていたり、珊瑚礁にすむ小型のサメの一種では胸びれと腹びれを本当の“足”の様に使って海底を歩き回ったりと、ただ“ひれ”とはいっても、その形も役割も様々です。ひれは、魚たちが千差万別な水中の環境にうまく適応して生き抜くために獲得した、多様な進化の結果を表しているのでしょう。

(漁業資源部 後藤 友明)

 

図 魚のヒレの各部名称と変わったヒレを持つ魚

A 一般的な魚の形態とヒレの名称
B 背鰭の一部が細長い釣り竿のようになったミツクリエナガチョウチンアンコウ(チョウチンアンコウの仲間)
C 背鰭の一部が吸盤になったクロコバン(コバンザメの仲間)
D 胸びれと腹びれを使って海底を歩き回るエポーレット・シャーク(オーストラリアにすむサメの仲間)