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N0.19 2004年 3月

物差しでワカメの長さを測っている写真          漁業者が養殖ワカメを間引いている作業の写真
      ワカメの生育調査                 ワカメの間引き作業
 ワカメの生育調査は、順調に成長しているか、病害虫が発生していないか確認します。また、間引き作業は、大きさや品質が揃った製品にするために欠かせない作業です。これらの適正な管理のもと、生産者の方が丹誠込めて育てたワカメが、三陸産ワカメとして消費者に高く支持されています。
目  次
   特集 ワカメ養殖業への
          取り組み

報告1 ワカメ優良種苗生産技術の開発
報告2 ワカメ流通の構造的問題
報告3 冷凍生ワカメの開発と商品化
成果情報 1 魚肉ねり製品を用いた新発酵食品の開発(特許出願中)
2 白色水槽飼育はカレイ目マツカワの無眼側黒化防止と成長促進に有効である
トピックス 1 平成15年の漁海況について
2 大型クラゲの来遊について
各部だより 漁場保全部 貝毒監視調査について
漁業資源部 昨日の市況情報、沿岸水温情報が携帯電話やパソコンから入手できます
企画指導部 水産技術センター出前フォーラムについて
シリーズ 岩手の海に現れた珍しい魚―ウチワフグ―
編集後記
特集:ワカメ養殖業への取り組み
 岩手県は、岩手のワカメ養殖業の国際競争力を高めるためにワカメ養殖業構造改革アクションプログラムを策定しました。
水産技術センターでは、所内に部横断のプロジェクトチームを立ち上げ、課題解決に向けて取り組んでいます。
 これまでにワカメ養殖ハンドブックの改訂を行い、既に配布されたことと思います。
 今回は、これまでに得られた成果から、「ワカメ優良種苗生産技術の開発」、「ワカメ流通の構造的問題」及び
「冷凍生ワカメの開発と商品化」について紹介します。
報告1 ワカメ優良種苗生産技術の開発
西洞 孝広(水産技術センター増養殖部)

【目的】
 岩手県産ワカメの特徴として、切れ込みが深く歯ごたえのある厚い葉や色の濃さ等があげられますが、各漁場においてこうした岩手らしいワカメを生産するには、形質の優れた親を用いて種苗を作る必要があります。しかし、ワカメの形や葉の厚さ等の特徴は養殖を行う海域の環境条件によっても変わるため、それぞれの海域の環境条件に最もあった種苗を選ぶ必要があります。増養殖部では、種苗生産用の親にするワカメをそれぞれの海域に生えている天然ワカメの中から選び出す方法を明らかにして、岩手県の各海域で品質の優れたワカメを安定生産できるようにするための研究を行っています。
【試験研究方法】
 平成13年6月に綾里地先で潜水によりワカメを採集し、形や重量等を測定しました。測定したうち、岩手ワカメの大きな特徴の一つである葉の切れ込み度合いを示す「欠刻幅/葉幅」(図1)の比率が低いもの2本と、高いもの2本、計4本の天然ワカメから無基質採苗(ワカメの胞子をフラスコにとって培養し、増やしたものを用いて種苗生産する方法)を行い、養殖しました。4月に収穫サイズになったワカメを刈り取って形や重量等を測定して親との比較を行いました。
【成果の概要】
 それぞれの種苗の形と親の形を比較した結果(図2)とは必ずしも一致はしませんでしたが、種苗毎に比較してみると、親の欠刻幅/葉幅の比が低い(葉の切れ込みが深い)ものほど、種苗の欠刻幅/葉幅の比が低い(葉の切れ込みが深い)ことがわかりました。また、当所で毎年田老と吉里吉里で養殖されているワカメの生育状況を調査している結果と比較すると、種苗の欠刻幅/葉幅の比のばらつきが小さく、品質のそろったワカメになっていることが確認されました。また、刈り取ったワカメの写真撮影を行って比較した結果、種苗毎に形態は類似していると感じられました。この結果から、良い親を選び、無基質種苗生産技術を活用することによって品質が良く、質のそろったワカメを生産することが可能になるものと考えられます。
 増養殖部では現在も同様の試験を綾里の他、田老でも継続して実施しています。今後も継続してデータの蓄積を図り、親を選ぶ基準を明確にすることや、より簡単に良い種苗を安定生産する方法について検討することにしています。

 また、このほかに一度養成したワカメの中から良いものを選び、そこから無基質採苗した、いわゆる”二世種苗”を有効に活用することによって、品質が良く早く大きくなるワカメを生産し、収穫期間を長くして作業の分散や収穫量の増大が可能かどうかについても検討しています。
 このほか、無基質採苗した人工種苗については、沖出し後の芽落ちが激しく、それが同技術の普及を妨げる要因の一つとなっていることから、採苗・沖出しの方法についても技術改良が必要と考えられます。この点については、従来無基質採苗に用いられているクレモナ糸に替えてシュロ糸による無基質採苗を試みた結果、クレモナ糸に比べて珪藻等の付着物があっても芽の生育が良好でした。しかし、シュロ糸の場合には、事前にアク抜きが必要なことや、太いために同じ大きさの枠に巻ける糸の長さが短くなるなどのデメリットもあり、今後も技術的な改良を検討していくことにしています。

ワカメの全体図
 図1  ワカメの測定部位の名称



グラフにより、親ワカメの形が次世代に影響することを示す
種苗Aのワカメ1 種苗Aのワカメ2 種苗Aのワカメ3 
種苗A
  種苗Bのワカメ1 種苗Bのワカメ2 種苗Bのワカメ3
種苗B
種苗Cのワカメ1 種苗Cのワカメ2
種苗C
  種苗Dの写真1 種苗Dのワカメ2 種苗Dのワカメ3
種苗D
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報告2 ワカメ流通の構造的問題
宮田 勉(水産技術センター企画指導部)
 昭和の末から中国産ワカメが輸入され、近年でも高水準で輸入されていることから平成12年、13年と岩手県産ワカメ価格は急落したが、平成14年、15年価格は急落前の価格に戻り、産地では一段落した感があるのではないでしょうか。しかし、輸入品を中心とした消費構造は大きな問題を抱えたままの状況であり、放置しておけば、産地がまた窮地に陥ることは間違いないでしょう。そこで、今回は流通の構造問題についてお話しします。
・首都圏消費者調査結果から
 首都圏の消費者200名を対象に調査を行った結果、湯通し塩蔵、カット・ワカメの主な食べ方は、みそ汁、サラダ、酢の物の3種が大半を占め、週1回程度食していることが分かりました。しかし、これ以外の料理方法はわずかであり、ワンパターン化しており、料理方法の開発がない限り、消費量は減少することが考えられます。
 また、購入するとき、最も重視する要素は産地名(産地ブランド)であり、「三陸産」は非常に高く評価しておりました。しかし、全国の湯通し塩蔵ワカメ商品を百数十袋集めたところ、産地名を前面に押し出しているパッケージは少なく、「生わかめ」「おさしみわかめ」などが多く目立ちました。したがって、消費者に訴求できる「産地ブランドのロゴ」や「産地ブランドのキャッチフレーズ」の開発を行い、輸入品との差別化を図る必要があります。
 表に示したように、首都圏消費者の官能検査で、輸入物は非常に高く評価されており、キログラムに換算すると約千円の評価をしています。実際はキロ3百円ぐらいであることから、輸入品の価格競争力は非常に高いといえます。
・国産ワカメの強みと課題

 国産ワカメの強みは、中高年層が好む湯通し塩蔵商品だけであり(図)、近年消費が伸びているメカブなどの商品は全て中国産を中心とした輸入品が占めております。このまま若壮年層世代に「ワカメ=輸入品」の固定観念が浸透すれば、
若壮年層が中高年層に世代交代しても国産ワカメを好まなくなることは間違いないでしょう。若壮年層に向けたPRも今後重要と思われ、実際に三陸産メカブ、三陸産スープ、三陸産カップラーメンを売ることが効果的と思います(モノコミ戦略)。

表 産地別ワカメ商品価格の意識調査結果
岩手産 宮城産 鳴門産 中国産 韓国産
単位(円/200g) 
平均 294 282 254 193 198
中央値(メジアン) 200 300 250 200 200
最頻値(モード) 300 300 300 200 100
最小 50 100 50 0 0
最大 600 600 600 500 500
単位(人)
標本数 194 194 194 191 190

図、若年層は中国ワカメを、中高年層は三陸塩蔵wかめを消費する
図 商品カテゴリ別主産地

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報告3 冷凍生ワカメの開発と商品化

小野寺 宗仲(水産技術センター利用加工部)

【目的】
 岩手県のワカメ加工は、湯通し塩蔵ワカメが主流で、それを原料とするカット・ワカメは人気商品になっています。これらの既存製品では、今後のワカメ生産・消費量の拡大は難しいことから、新規食材として注目される早採りワカメの冷凍技術の開発を試みました。
【試験研究方法】
 ワカメをそのまま凍結した場合、解凍したワカメは軟らかく、色合いも悪くなります。ワカメの冷凍技術を開発するには、解凍時にワカメの軟化と、変色を防ぐ必要があります。以前、岩手県でも加工していた灰干しワカメの製造原理をヒントとして、ワカメをアルカリ性の溶液に漬け、カルシウムを添加することが有効であると思われました。そこで、非常に安価で、食品に利用しても安全な水酸化カルシウムを用いて検討しました。
 ろ過海水に水酸化カルシウムを溶かした溶液に生ワカメを浸漬し、軽く水を切ってから真空包装を行い凍結しました。
 凍結したワカメは半解凍させ、湯通し、冷却後に試食し、食感や色を官能的に評価しました。
【成果の概要】
(1) 水酸化カルシウム0.1%を添加したろ過海水に2〜15分間浸漬(原藻の大きさや浸漬量により加減)したワカメをマイナス25℃で凍結した場合、有効性が認められ、これまで困難とされてきた解凍後の軟化や変色等の問題点を解決しました。
(2) 開発品は約1年の冷凍保管でもほとんど品質劣化はせず、芯付きで冷凍可能なため、加工作業が容易であり歩留まりも良いことがわかりました。
(3) 湯通し塩蔵ワカメやそれを原料とするカットワカメよりも風味と食感が良く、ミネラルも豊富であり、旬の味をいつでも味わうことが出来ます。
(4) 冷凍生ワカメの製造技術は平成14年1月に開発して以来、随時、県内・外の加工業者や漁業者等に普及・指導してきました。多くの業者等で試作が行われており、県内の業者製品は、大手コンビニのワカメサラダに採用され、全国に販売されるなど、わずか2年で生産量は150トンを超え、今後さらに増加が見込まれています。

冷凍ワカメの写真
凍結状態

冷凍ワカメを戻した写真
解凍湯通し後

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成果情報
 魚肉ねり製品を用いた新発酵食品の開発特許出願中)

 小野寺 宗仲(水産技術センター利用加工部)

 かまぼこ等の魚肉ねり製品は、魚肉に2〜3%の塩を加えてすりつぶした(塩ずり)後、加熱することによって作られます。魚肉タンパク質の構造変化を巧みに利用したもので、塩ずりした肉のりは加熱変性させると弾力性に富んだかまぼこ(ゲル)に変化します。本来、前浜の魚からすり身を調製してかまぼこが製造されていたが、昭和35年頃に開発された冷凍すり身(北洋で漁獲されたスケトウダラを原料とするもの)の登場により、現在の魚肉ねり製品の主原料となっています。魚肉ねり製品は、板かまぼこ、ささかま、ちくわ、はんぺん、ソーセージ等と多種多様であり、特に、カニ風味かまぼこは近年の大ヒット商品です。しかし、従来の魚肉ねり製品は弾力性に富んだしなやかな食感を重視する傾向が強く、これからの高齢化社会に向けて、軟らかくて飲み込みやすい製品の登場が望まれています。そこで、魚肉ねり製品を発酵・熟成させたソフト化食品を開発しました。
   製品の写真
 米こうじ、塩、酒、紅こうじ色素等で調製したもろみにかまぼこを浸漬させ、20〜25℃程度で約3ヶ月間発酵させます。次第にかまぼこ特有の食感が無くなり、全く別の食品に変化します。かまぼこ中のタンパク質はもろみ中の酵素によって分解され、うま味成分が増加し、濃厚かつ独特の風味になります。酒の肴として、何とも言えない絶妙な味です(写真上)。また、発酵もろみペーストは調味料としても利用でき、豆腐やイカ刺し等に適しています。元来、魚肉ねり製品は低脂肪なものが多く、低脂肪ドレッシングとしての利用ができます(写真下)。
  製品のアップの写真

    
【製造工程の一例】
米こうじ+焼酎+塩+色素 → 攪拌・混合 → もろみ
かまぼこ等の魚肉ねり製品 → 適度にカット → もろみに浸漬
 → 室温か適度な温度で一定期間発酵 → かまぼこ発酵食品

 発酵食品(固形物)の遊離アミノ酸総量は2,000mg(湿重量100g当たり)を超えており、非常に風味が濃厚です。組成を見ると、うま味成分であるグルタミン酸が約700mgと3分の1を占めており、他にグリシン、アスパラギン酸、ロイシン、リジン、アラニン、アルギニンが100mg以上含有しています。
 近年、遊離アミノ酸の機能性が注目され、ダイエットサポート飲料などの高アミノ酸含有食品が商品化されており、こうしたアミノ酸ブームが続く昨今、本発酵食品は消費者に理解されやすい環境が整っており、今後の動向が楽しみです。
 特許を共同出願した魚貞(うおてい)商店(釜石市)から平成16年春に販売される予定であり、現在、仕込み等の準備が進められています。なお、本技術は県有財産登録されており、販売時には書類申請・審査等が必要となります。

アミノ酸組成のグラフ、グルタミン酸が多い
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 白色水槽飼育はカレイ目マツカワの無眼側黒化防止と成長促進に有効である           

   
 山野目 健(水産技術センター種苗開発部)

ねらい:カレイ目魚類において、水槽に砂を敷かないで飼育すると無眼側が黒ずむ現象(黒化)が起こります。しかし、敷砂飼育は管理上問題が多いため、本研究では、水槽に砂を敷くことなく、水槽色によりマツカワの無眼側黒化を防止する技術の開発を目的としました。
成果の特徴
(1)全長8cmと5cmの無眼側が黒化していない個体を白色、黄色、黒色水槽で8か月間あるいは5か月間飼育した結果、マツカワの無眼側の黒化面積率は黒色飼育魚と比較して、白色、黄色水槽飼育魚では有意に低くなりました。
(2)白色水槽飼育魚は黒色水槽飼育魚よりも有意に大きくなりました。
 以上の結果から、白色水槽飼育はマツカワの無眼側黒化防止と肥育促進に有効であることが明らかになりました。
成果の活用面等:白色水槽飼育は薬品等を使用しないので環境に優しく、マツカワの品質向上と成長を促進できる有効な技術であり、今後、他のカレイ目魚類への応用が期待できると考えております。グラフ、黄色水槽から黒水槽に移すと黒化する
 

白、黄色水槽で飼育した方が黒水槽よりも成長が早い
  白、黄色、黒色の水槽で飼育したマツカワの成長図
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トッピックス
トッピック1 平成15年の漁海況について

伊藤 寛・高橋 憲明(水産技術センター漁業資源部)
 平成15年の岩手県周辺の海況と県内魚市場に水揚げされた水揚げ統計について、取りまとめたので紹介します。

海況:1〜3月
 1〜3月の沿岸平均表面水温は6.74℃。3月後半に親潮第一分枝から派生した冷水が接岸したため、県中部、県南部では表面水温が3℃以下になるところがありましたが、県北部では津軽暖流の影響により、水温の大幅な低下は見られませんでした。
漁況 春:イサダ
 平成15年のイサダ漁(イサダ船曳網)は2月26日(前年の6日遅れ)に始まり、漁期当初から県全域で水揚げがありました。水揚量は、前年は2月下旬から4月上旬まで3,000〜4,000トン/旬で推移したものの、平成15年は2月下旬と3月上旬は1,000トン/旬前後、3月中旬は6,000トン、その後は4,000トン/旬前後で推移して、4月23日(前年の11日遅れ)に漁獲枠(22,513トン)に達し終漁しました。

海況:4〜6月
 4〜6月の沿岸平均表面水温は8.79℃。表面では平年並みになったものの、100m深では冷水の影響が残っており、平年並〜3℃低い状態が続きました。
漁況 夏:サバ
 平成15年はサバ(定置網)の盛漁期が8月下旬からと前年より2旬ほど遅れたため、8月までは前年の2割程度の水揚量にとどまっていました。しかし、9、10月には500〜1,200トン/旬と高水準の水揚げが続き、11月上旬にようやく前年並み(6,109トン)になり、12月末までの水揚量は6,734トンと前年(6,090トン)をやや上回りました。

海況:7〜9月
 7〜9月の沿岸平均表面水温は17.04℃。春から続いて冷水の影響が顕在であったため、水温は若干上昇するものの、平年以下の海域が多くありました。
漁況 秋:サンマ
 平成15年のサンマ漁(サンマ棒受け網、定置網)は前年よりも早い8月中旬から本格化し、8月下旬までの水揚量は2,658トン(前年の1.5倍)と好調に推移しました。その後の水揚げも各旬前年同期の1.1倍〜3.7倍と高水準で推移し、10月中〜下旬に一旦前年を下回ったものの、その後再び増加し、12月末までの水揚量は46,329トン(前年の1.4倍)となりました。

海況:10〜12月
 10〜12月の沿岸平均表面水温は16.24℃。12月に入って冷水の影響が弱まり、水温も平年並みに落ち着きました。また、10月頃から津軽暖流にのって、沿岸にエチゼンクラゲが流入し、定置網等に被害をもたらしました。
漁況 冬:サケ
 平成15年のサケ漁(定置網、さけ・ます延縄、磯建網)は前年同様8月中旬から始まり、9月末までの水揚量は2,689トンと前年(2,703トン)並みとなりました。その後、水揚げは順調に伸びていったものの、ピークは前年より1旬遅れの11月下旬(6,079トン)となりました。水揚げは12月に入って減少に転じたものの、12月末までの水揚量は27,330トンと前年(24,793トン)をやや上回りました。
その他の漁況  スルメイカ
 定置網の初水揚げは5月26日と平成9年以降最も遅く、滑り出しは前年並であったものの、7月下旬〜8月上旬を除いて前年を上回る水揚げが続いたため、9月末までの水揚量は2,429トンと前年の4.5倍に達しました。しかし、10月中旬から水揚げが前年の10%未満まで激減したため、12月末までの水揚量は2,760トンとほぼ前年並みとなりました。
 いか釣りの水揚げは8月下旬まで順調に推移し、8月末までの水揚量は1,620トンと前年の1.4倍に達しました。しかし、その後は前年を大きく下回る水準で推移したため、12月末までの水揚量は2,973トンと前年の55%にとどまりました。

(注1; 漁獲量の数値は岩手県水産技術センターの集計値を使用
(注2; 海況図は新水産情報システムの衛星画像を使用

 100m深の水温見ると、2004年は夏場に水温が高い傾向にあった。海況図、冷水が宮城県沖まで南下している
図 1〜3月の代表的な海況図
  (3/22〜3/29の1週間合成図)
 4から6月に海況図、本県沿岸は10℃台
図 4〜6月の代表的な海況図
  (5/22〜5/26の1週間合成図)

 9月の海況図、本県沿岸でも20℃台
図 7〜9月の代表的な海況図
  (9/15〜9/22の1週間合成図)

 12月の海況図
図 10〜12月の代表的な海況図
  (12/4〜12/11の1週間合成図)

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トピック2 大型クラゲの来遊

   小川 元(水産技術センター漁業資源部)

 平成15年秋、平成14年度に引き続き、岩手県沿岸に大型クラゲ(エチゼンクラゲ)が来遊しました。このクラゲの傘は直径が1m以上にもなり、体重は100sを超える巨大なものです。これらが大量に来遊し、定置網等に混入して甚大な被害を受けました。
 エチゼンクラゲの写真1
○エチゼンクラゲって何?
 エチゼンクラゲ(Stomolophus nomurai)は、刺胞動物のビゼンクラゲ科に属し、日本近海に発生するクラゲのなかでは、最大の種になります。
 本種は秋から冬にかけて(10〜12月)、東シナ海(中国大陸沿岸)で発生すると言われており、プラヌラ幼生、エフィラを経て夏から初秋にかけて急激に成長します。寿命は1年以内と見られています。
 本種の運動能力は、20℃以上が活発で、15℃以下で次第に活力が低下すると報告されています(安田2000)。しかしながら、平成16年1月、沿岸の表面水温は12℃台まで低下しましたが、運動能力を示す個体が多数確認されており、低温耐性は報告よりも強いと考えられます。
 本種の正常な遊泳水深は、0〜30mの表層近くであり、衰弱またはへい死した個体は150〜300mまで沈降し、底曳網に大量に混入した報告もあります。
 触手には多数の刺胞があり、クラゲ特有の刺胞毒を持っています。毒性は弱いとされていますが、この触手に触れると痛よう感(いたみとかゆみ)がありますので、直接皮膚に触れることは避けてください。
○このクラゲはどこから来たの?
 
平成15年秋に本県沿岸に出現したエチゼンクラゲは、平成14年秋に東シナ海で生まれたものと考えられます。この平成14年秋生まれのクラゲが急激に成長しながら対馬暖流に乗り、平成15年夏には全重100sを超える大型となって日本海に出現しました。
 日本海沿岸に出現したエチゼンクラゲは北上しながら日本海沿岸で操業している定置網及び底曳網漁業に甚大な被害を与え、津軽暖流に乗って太平洋に来遊し、秋サケ漁の最盛期を迎えていた本県沿岸に到達しました。その後太平洋岸を南下し、12月下旬には房総沿岸域まで達したことが確認されています。
○大量発生の歴史
 過去におけるエチゼンクラゲの被害は、古くは昭和33年(1958年)に遡り、8〜10月に日本海で被害を出した後、津軽海峡を通過中には浮遊機雷と誤認されて青函連絡船の夜間運行を中止させたほか、噴火湾、三陸沿岸でもサンマ棒受網を始め多くの漁業に損害を与えたとの記録があります。
 その約40年後の平成7年(1995年)には、前回と同様、津軽海峡を通過し、12月には岩手〜宮城県北部沿岸に達しました。このときは、定置網、小型底曳網及びまき網等に被害を及ぼしましたが、その被害程度は昭和33年程には至らなかったとのことです。
 記憶に新しいところでは、その7年後の平成14年に、再び異常発生し、10月頃から本県沿岸で散見され、主群は11月に出現しました。本県における被害の多くは、県北部の定置網を中心としたものでありました。
 エチゼンクラゲが、本県沿岸に出現した年は、昭和33年、平成7年、そして平成14年、平成15年の2年連続を含めて4回ですが、平成15年秋の本県沿岸での被害は、昭和33年に及ばないものの近年ではもっとも大きな被害であったと考えられます。
○エチゼンクラゲ対策
 エチゼンクラゲの被害については定置網漁業から最も多く報告されており、一晩で100トンものクラゲが入網し、クラゲの重みで網が裂けるなど県下全域から甚大な被害が報告されています。
 また、刺胞毒による魚の体表変色、クラゲにもまれて魚が窒息死するなど鮮度が落ち、商品価値が著しく低下するなど大きな影響を与えています。
 そこで、漁獲した魚とクラゲを分離する手法の1つとして、定置網に袋網(キンコ網)を取り付ける方法を提案しています。


 この方法は、定置網の魚捕部(箱網)に袋網を設置し、網揚げ時に逃避行動をとるサケを袋網に優先的に入網させ、魚捕部に残るエチゼンクラゲとの分離を図る手法です。
 この場合、魚捕部に残ったエチゼンクラゲは、網の縫合部をはずして定置網外に放出することとなります。

定置網の構造を示した図

 また、別の対策法として、岩手県定置漁業協会と(有)スリーラック(北海道苫小牧市)が共同で実用試験を行っているクラゲ粉砕装置があります。この装置は、ポータブルガソリンエンジンで吸引口に設置した回転歯を回転させ、負圧により回転歯で切断したクラゲ破片をポンプで吸引するシステムです。
 早期に実用化されることが期待されます。
  フィッシュポンプを使った除去の様子

○大量発生の原因は?
 昭和33年の大量発生を気象的側面で分析した日本海区水産研究所の下村敏正氏は、夏期の日照りと水温、気温が高く推移したことが要因との可能性を指摘していますが、現在のところはっきりとした因果関係は明らかとなっていません。
 しかしながら、東シナ海で大量発生したクラゲが本県沿岸(太平洋沿岸)まで来遊した大きな要因として、秋〜冬期にかけての津軽暖流が東へ強勢に張り出していたことが挙げられます。このことは平成14年にも当てはまることであり、何らかの要因によりクラゲが大量発生すると同時に津軽暖流が東へ強勢に張り出せば、再び本県沿岸へ来遊する可能性があります。
○エチゼンクラゲは食べられるの
 巨大で一見グロテスクなこのクラゲ、傘の部分は中華料理でおなじみの中華クラゲの原材料です。このクラゲの傘を塩とミョウバンを用いて脱水し、塩抜きして味付けすると、あのコリコリとした歯触りの中華クラゲになります。当センターでも定置網に入網したクラゲを塩で脱水し、食用としてみました。出来の方はなかなかのものでしたが、脱水による歩留まりが悪く、多量のクラゲの傘を用いて完成品になったのは、ほんのちょっぴりです。
 手間がかかる割には歩留まりが極端に低く、人件費の高い日本での企業化は難しいと考えられます。
○おわりに
 全国的に見ても、エチゼンクラゲ駆除については抜本的な対策が無く、関係者全員頭を抱えているところです。来年以降、この珍客がいらっしゃらないことを切に願っています。
  定置網に混入したエチゼンクラゲ

(本文執筆にあたっては、安田徹氏の「海のUFOクラゲ」から多数引用しています。)
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各部だより
漁場保全部
貝毒監視調査について


 ホタテ貝など養殖貝類を中心に、毎年のように発生している貝毒は、プランクトンが原因であることは皆さんご承知と思います。その監視調査を、昭和54年度以降、継続して実施しています。
 現在は、本県沿岸を7海域に分け、県と業界が、10定点で貝毒検査を実施し、安全な食品の提供に努めています。これまでの調査結果をまとめてみると、次のようになります。
1 マヒ性貝毒では、春から夏にかけての毒化は、大船渡湾のように毎年原因となるプランクトンが地種から発生する場合と、年によって各湾一斉に毒化する外海由来の場合とがある。秋から冬にかけての毒化は、地種による場合、外海由来の場合、双方による場合と様々であり、原因プランクトンの発生は長期にわたった場合でも、貝の毒化は水温の制約を受け、11〜12月に限定される。
2 下痢性貝毒の発生は、春〜夏に限定され、冬の毒化は見られない。原因プランクトンの発生も春〜夏に限定される。
 私たち漁場保全部では、山田湾と大船渡湾に定点を設け、貝毒危険期には、毎週採水し、原因プランクトンの発生動向を監視しています。必要に応じ、その他の湾の原因プランクトンの監視も行い、安全な養殖貝類供給の一助となるよう関係者に情報提供を行っているところです。
最近は、予算が年々縮減しており、特にモニタリング調査を取り巻く環境は非常に厳しく、より効率的な調査に向け、調査体制の見直しが迫られているところです。

漁業資源部
昨日の市況情報、沿岸水温情報が携帯電話やパソコンから入手できます

 県内各魚市場のご協力により、前日の水揚げ数量、水揚げ金額等の市況情報について、インターネットやFAXを使って一般の皆様にも利用いただけるようになりました。魚市場別、漁業種類別、魚種別に検索できます。
 また、テレメータブイとして、県内6湾の水温、塩分等を観測していた装置が撤去され、新たに最寄りの漁港に水温センサーが取付けられ、水温観測を続けています。
 データは4時間毎に更新され、インターネットやFAXにより入手できます。観測場所、観測水深がこれまでと異なりますが、人工衛星による水温画像と共にご利用下さい。
フィッシャリィ・ネットいわてのトップページの図

URLは次のとおりです。
パソコン
http://www2.suigi.pref.iwate.jp/

iモード
http://www2.suigi.pref.iwate.jp/i/
J-sky
http://www2.suigi.pref.iwate.jp/j/
EZweb
http://www2.suigi.pref.iwate.jp/au/

企画指部
水産技術センター出前フォーラムについて


 当センターでは、開かれた試験研究機関としての取り組みの一環として、試験研究の内容を関係者に報告するとともに、業界ニーズに沿った試験研究を推進していくことを目的に沿岸各地区において出前フォーラム(水産関係者との懇談会)を開催しています。
 今年度もこれまで、久慈地区で漁業資源について、吉浜、越喜来地区でアワビ・ウニについての試験研究をテーマとしたフォーラムを開催しております。
 開催希望がございましたら、お気軽にご相談下さい。

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シリーズ−岩手の海に現れた珍しい−

 平成14年12月11日に大船渡市・大鮑漁場の定置網で漁獲され、釜石魚市場に水揚げされました。
標準和名:ウチワフグ(フグ目/ウチワフグ科)学名:Triodon macropterus
地方名:なし
体長:40cmウチワフグの写真
【主な特徴】
(1)体は硬い皮膚でおおわれる
(2)尾部は細く、尾びれは2叉する(V字形)
(3)上顎に2枚、下顎に1枚の鋭いくちばし状の歯がある
(4)頭部の背面はゴツゴツした硬い骨盤でおおわれる
(5)腹部にはひだ状の膜があり、ウチワのように広げることができる
(6)腹部の膜には黒い斑点がある
【その他特記事項】
 伊豆半島以南の南日本の水深50〜300m付近に分布する。フグの仲間としてはやや深いところにすむ。岩手県付近ではごくまれ。
 フグの仲間ですが、無毒で、沖縄では一本釣りで漁獲され、食用となっています。
 標準和名のウチワフグは、ウチワのように広がる腹部がまさにそれを示しています。学名のTriodonは、ギリシャ語で3を表すtriとギリシャ語で「歯」を表すodonusから成り立っていて、上顎に2枚、下顎に1枚のくちばしのような特徴的なするどい歯を持っていることを表しています。種名を表すmacropterusは、ギリシャ語で「大きい」を表すmacrosとギリシャ語で「翼」を表すpteronから成り立っていて、ウチワのように広がった腹部が大きな翼のように見えるところから付けられています。
【ちょっと一言】
 このコーナーでは、多くの方に図鑑を利用していただくために、図鑑中で用いられる魚に関する用語を解説しています。 今回は、魚の各部の名称についてご紹介します。魚は、私達と同様に背骨を持った動物で、背骨の向きを中心として体各部の位置関係が決められており、魚も同じ様に扱われます。例えば、体に縞のある魚は、頭の方から尾びれに向かって縞のある場合、「たて縞」と呼び、背中から腹側に向かって縞のある場合、「よこ縞」と呼んでいます(図1)。
 魚の体は、大きく頭部・胸部・腹部・尾部に分けることができます(図2)。

 頭部は、私たちの頭と同じで、眼・鼻・口・耳・脳といった器官を持っています。もちろん、一生水の中にすむ魚の場合、私たちとまったく同じ、というわけではありません。眼は魚眼レンズでまぶたがないとか、鼻は普通小さな孔が片側に2個あいていて、においを嗅ぐだけの器官となっているとか、耳は私たちの外耳にあたる器官がなく、耳石と呼ばれる石状の器官が頭蓋骨の中にあるだけとか、形も役割も違っています。
 また、魚は頭部と胸部の境目に、食道の入り口を取り囲むように弓状のエラと呼ばれる器官があって、水に溶け込んだ酸素を取り込んでいることも私たちと大きく違う点です。胸部は頭部と腹部の境目にあたり、私達と同様、心臓がありますが、私たちの腕にあたる部分が、胸びれとなっていることが私たちと大きくことなる点です。腹部には肋骨に囲まれた内臓があり、私たちとほぼ同じ構造となっています。
 ただ、魚には、水中で生活するために、浮力を得るために浮き袋と呼ばれる風船状の器官があることや、腹びれがあることが私たちとは大きく異なっています。腹部の後ろ側は、私たちが遠い先祖で失った尾となっていて、尾部と呼ばれています。
 尾部には、推進力を得るのに必要な尾びれとバランスを取るのに必要な背びれやしりびれがあり、体の中央を走る背骨によって支えられています。
               (漁業資源部後藤友明)
ブリの写真には、(頭から尾にむかって、たて縞が認められる))、ブリモドキの写真は背中から腹部に横縞が認められる。図1 (1)たて縞の魚:ブリ、(2)よこ縞の魚:ブリモドキサケの解剖図
図2 魚の体の呼び名

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編集後記
★今回のシーガルボイスは、「ワカメ養殖業への取り組み」を特集しました。当誌が皆さんのお手元に届く頃は16年産ワカメの作柄がほぼ分かる頃かと思いますが、15年産ワカメは、3月上旬の低気圧災害にもかかわらず、被災施設の早期復旧や残ったワカメの生産管理で収穫量向上に努めたこと等により、堅調年並みとはいかないまでも、近年では一息ついた感が見られます。
★しかしながら、本県ワカメ養殖業の構造は大きな問題を抱えたままであり、「のど元過ぎれば熱さを忘れる」ということではなく、ワカメ養殖業構造改革の確実な実行が必要であると考えます。
★さて、当センターも開所から、この3月で満10年になります。これまでも、得られた成果は関係者へ報告し、研究成果の普及と定着を図るとともに、広く関係者の意向把握に努め、ニーズを的確に反映した試験研究に取り組んで参りました。今後更に現場密着型の試験研究を推進していくためにも、皆さんの声をお寄せ下さるようお願いいたします。

 ・編 集:岩手県水産技術センター広報誌編集委員
 ・発 行:岩手県水産技術センター

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