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| 岩手山の火山活動が活発化し、入山禁止の措置がとられてから三ヵ月余りが過ぎた。山体の西側で火山性地震が頻発するなかで、「岩手山火山災害対策検討会」が緊急に検討を重ね、山体西側での水蒸気爆発を想定したハザ−ドマップが7月22日に公表された。それによると、縄文時代以降の最大規模を想定しても、噴石などが山麓の人家や観光宿泊施設に直接的な被害をもたらす可能性は小さいとされている。岩手山周辺では初めての火山災害予測図であり、広範囲な土石流への住民の不安と、観光業界による安全宣言といった両面の反応への対応を迫られる中で、予測しなかった岩手山南西部の地震(M6.1)が9月3日に発生した。幸い人的被害が軽微であったことから、自然災害は突発的に襲うこと、日頃からの防災対策の必要性を住民が認識する大きな契機になったとの評価もできよう。 現在、東側では切迫した状況にはないと考えられるものの、繰り返しマグマ噴火を発生していることから、今後の防災体制を構築するために、緊急に山頂でのマグマ噴火を想定したハザ−ドマップが作成された(10月9日公表予定)。縄文時代以降、最大規模の噴火の一つと考えられる1686年の噴火の規模を想定し、噴石・降下火砕物・溶岩流・火砕流・火砕サ−ジ、土石流・積雪期の火山泥流による被害が見積もられている。集落までかなりの被害を想定しているが(危険性を隠匿するなどの姿勢は取らない)、住民の正確な理解を求める活動を通じて、これまで岩手山で欠けていた、火山との共生の認識を深め、そのための具体的な防災対策を行政との連携のもとに一歩一歩進めることとしている。 この間、一部の週刊誌や新聞などによって、既に噴火しているとか、マグマが地表近くまで上昇しており、大規模な山体崩壊がすぐにも起きるととられかねない報道がなされている。また、一部研究者(機関)による観測の生情報や憶測が、報道関係者にその意味を十分説明することなしに提供され、地域住民に必要以上の不安を抱かせかねないとの危惧の念を抱いている。 火山災害を含め、自然災害が発生する事を防ぐことは出来ない。我々になしうるのは、いかに被害を少なくしうるかとの視点に立った、「減災」への努力である。その基本となるのは、住民の安全を頂点に、研究者・行政機関・マスメディアが連携する減災の正四面体構造とされている。すなわち、研究者は防災に寄与する情報の取得をめざして調査・研究を行い、それに基づいて行政が防災体制を構築し、マスメディアは住民にそれらの情報を正確にかつ迅速に伝達することである。地域へ発進する情報の価値判断の最大の基準は、地元住民の安全に寄与するかどうかである。 噴火の前から多数の観測計器を設置して監視が行われている岩手山は、研究者にとっては貴重な”学問的興味”の対象である。各個の自由な研究と正しい情報の公開が科学技術の発展には不可欠であり、究極的に火山災害の「減災」に寄与することはいうまでもない。しかし、多くの観測デ−タとの整合性を検討せずに出される単発のデ−タの公表や、インタ−ネット上で展開される、すぐにも大規模な火山災害が発生するかのごとき噴火のシナリオや確率などの議論は、基礎的な知識をもたない住民に公開された場合には、いたずらに地域を混乱に落とし込みかねない。いわゆる[学者災害][報道災害]である。 現在、多くの研究結果を集約し総合的な検討を行う場は、火山噴火予知連絡会議である。しかし、予知連は、刻々変化する火山活動を臨機応変に検討する頻度では開催されず、何よりも、法律や省令に基づかない気象庁長官の”私的な”諮問機関であり、地域の防災行政への踏み込んだ助言は行い難い。同様に、唯一公的な火山情報を提示する気象庁も、地域が今後の防災行政の推進に必要な判断は示さない。これは、火山災害の時期や規模をの予測が困難な現状では、いたしかたのないことと考えざるをえない。しかし、現実に災害対策基本法上、避難勧告などの発令の任にあたる、科学的知識も経験も少ない地方行政は、具体的な対応に戸惑い、住民は個別の研究者の情報に混乱することになりかねない。 地元の防災行政との接点の役割を避けられない地方大学として、以下のようなご配慮戴けないものかどうか、ご検討の程をお願いしたい。
岩手県には公的な火山観測施設がなく、また、地元岩手大学では火山の専門家も限られる。独自に観測できる部分も少なく、多くの関連機関のご協力ご支援なしには、今後の有効な防災対策も遂行しがたい現状にある。 初めて火山防災に取り組む立場であり、理解のいたらない点も多々あるのではないかと思われる。忌憚のないご助言、ご支援を改めてお願い申し上げる次第である。 |