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平成29年2月県議会定例会知事演述

ID番号 N52780 更新日 平成29年2月16日


平成29年2月県議会定例会知事演述の動画

1 はじめに

  本日、ここに第8回県議会定例会が開会されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。

 冒頭、昨年8月に本県及び北海道地方を襲った台風第10号により犠牲になられた方々の御冥福をお祈りいたしますとともに、応急仮設住宅等で不自由な暮らしを余儀なくされている方々をはじめ、被害を受けられた皆様に、心からお見舞いを申し上げます。
 「希望郷いわて国体」「希望郷いわて大会」の開催直前の被災に、天皇皇后両陛下をはじめ皇室の方々より、温かいお言葉を賜るなど被災された方々をお励ましいただきました。
 また、全国からお見舞いや多大な御支援をいただきましたことに、改めて御礼申し上げます。

(台風第10号災害からの復旧・復興)
 台風第10号による被害額は、宮古市、久慈市、岩泉町を中心に1,441億円にのぼり、生活インフラや農林水産業、商工業等、地域の社会経済に甚大な被害が生じました。
 昨年の9月補正予算においては、災害対応分として東日本大震災津波を除き過去最大となる予算を編成したところであり、今議会に提案している平成29年度予算案と併せ、切れ目なく対応します。
 一日も早く安心して暮らせる環境を取り戻すことができるよう、生活の再建と商工観光事業者及び農林漁業者の経営再建を支援します。また、甚大な被害を受けた河川、道路等の復旧・改修と水位周知河川の指定拡大を進め、ハード・ソフト両面から復旧・復興を着実に進めます。
 台風第10号災害の教訓を踏まえ、地域防災計画に避難勧告等の発令に関する市町村への助言体制を位置付けるなど、地域防災力の強化を図り、県民の命を守り、被害を軽減させる防災体制を整備して参ります。
 

2 東日本大震災津波からの復興

(第2期復興実施計画の成果と課題)
 平成23年3月11日から間もなく6年になろうとしています。
  改めて、東日本大震災津波で貴い命を落とされた方々に対し、謹んで哀悼の意を表します。また、被害を受けられた皆様に心からお見舞いを申し上げます。
 本格復興期間に当たる第2期復興実施計画においては、災害廃棄物処理分等を除く実質的な事業費ベースで、第1期の基盤復興期間を上回る予算規模で事業を推進し、復興道路や湾口防波堤、海岸保全施設の整備などを進めました。
 また、基盤復興を土台とし、地域の社会経済活動を支える復興まちづくり、被災者の生活の安定と住宅再建、地域産業の再生に取り組み、この間に被災事業所の約8割が営業を再開し、商店街の再建が本格化しています。
 一方、今なお1万3千人以上の方が応急仮設住宅等での生活を余儀なくされています。地域コミュニティの再生・活性化や、販路回復と担い手不足など復興の状況に応じた課題も生じています。被災者イコール復興者、一人ひとりに寄り添った支援を進めて参ります。

(第3期復興実施計画の推進)
 更なる展開への連結期間のスタートとなる平成29年度は、策定を進めている第3期復興実施計画に基づき、多様な主体の参画や交流、連携により、復興事業の総仕上げを視野に復興の先も見据えた地域振興にも取り組みながら、復興を推進します。
 「安全の確保」については、防災文化を醸成、継承しながら、災害に強い安全な多重防災型まちづくりの実現を目指します。
 「暮らしの再建」については、恒久的な住宅への移行とコミュニティの再構築を支援し、お互いに支え合い、安心して心豊かに暮らせる生活環境の実現を目指します。
 「なりわいの再生」については、地域資源を活用した産業振興や交流人口の拡大により、地域のなりわいの再生と地域経済の回復を目指します。
 さらに、「三陸創造プロジェクト」を進め、長期的な視点に立ち、多くの人々をひきつけ、多様な人材が育まれる、将来にわたって持続可能な新しい三陸地域の創造を目指します。
 今後、宮古・室蘭間のフェリー航路の開設、三陸鉄道による久慈・盛間の一貫経営、ラグビーワールドカップ2019TMの釜石開催が予定されています。復興の更なる展開に向けた好機となりますので、準備に万全を期して参ります。また、JR山田線の移管開業に併せ開催する、仮称ではありますが三陸防災復興博の具体的な検討を進めます。
 平成23年4月の「がんばろう!岩手」宣言から5年後の昨年4月、新「がんばろう!岩手」宣言を発表しました。発災から時を重ね、記憶の風化が言われる中で、改めて誓いを確認し、復興に携わる全ての方々に連携を呼びかけました。復興の大きな原動力となっているのは、日本全国、世界に広がる様々な「つながりの力」と岩手県民の「地元の底力」です。
 復興を通して培ったつながりと地域の力で、「いのちを守り 海と大地と共に生きる ふるさと岩手・三陸の創造」を目指します。
震災前の姿に戻すのではなく、Build Back Better、すなわち、震災前より強靱な社会へ復興する、三陸のより良い復興の取組を進めて参ります。
 また、東日本大震災津波の被災県として、津波の教訓や復興の取組を国内外に発信し、日本、世界の防災力向上に貢献して参ります。
 

3 ふるさと振興の推進

(希望郷いわて国体・希望郷いわて大会の成功とレガシーの継承)
 東日本大震災復興の架け橋「希望郷いわて国体」「希望郷いわて大会」が大きな感動のうちに終了し、希望郷いわて国体では天皇杯・皇后杯とも第2位、希望郷いわて大会では139個のメダル獲得という輝かしい成果をあげました。
 両大会は被災地で初めて開催されたものであり、東日本大震災津波及び台風第10号からの復旧・復興に全力で取り組む中、全国からの御支援と県民の皆様の強い思いが開催を支え、成功へとつなげることができました。改めて御協力いただいた皆様に御礼申し上げます。
 都道府県応援団・復興支援感謝団による応援や歓迎、被災3県合同合唱団の歌声、勇壮な伝統芸能などにより、全国から寄せられた御支援に対する感謝や、復興に励む本県の姿をお伝えすることができました。
 両大会のスローガン「広げよう感動。伝えよう感謝。」のもと、高められたスポーツの力や全国の方々から評価いただいた伝統芸能をはじめとする文化芸術の力、そして、応援、歓迎、おもてなしの力など、ソフトパワーの高まりをレガシーとして次世代に継承して参ります。

(共生社会の実現)
 希望郷いわて大会では、自らの可能性に挑戦する選手の姿に感動と共感が広がりました。また、多くのボランティアが大会運営を支え、全国から訪れた選手団に声をかけ寄り添う姿は、本県に共生とボランティア精神が根付いていることを実感させました。
 人と人との共生、人と自然との共生を理念とする平泉の文化が築かれた岩手から、障がいのある人もない人も互いに尊重し、共に支え合う姿を全国に発信し、共生社会の実現に向けて大きく貢献することができたと思います。
 昨年10月、障がい者の文化芸術活動の振興を目指す知事連盟において、「障がいのある人もない人も共に学び共に生きる岩手県づくり条例」をはじめとする共生社会の実現に向けた本県の取組や、全国でも先駆的な「いわて・きららアート・コレクション」「るんびにい美術館」の取組を紹介したところです。
 県内では優れたアール・ブリュット作品が数多く創作されており、県民理解の促進や芸術活動に対する支援を進め、志を同じくする自治体と連携し、地方が主役となるような障がい者の文化芸術活動を推進して参ります。

(文化・スポーツの振興)
 文化・スポーツの振興により、個人の感性・創造性が発揮され、心のつながりを育み、多様性を理解し尊重し合える社会の形成が図られます。また、文化・スポーツの振興は、地域コミュニティの活性化や観光振興をはじめとする経済分野への波及も期待され、新たな需要や人の流れを創出し、復興とふるさと振興につながります。
 こうした文化・スポーツの力を生かし、県民一人ひとりの個性と創造性が輝く地域づくりを進めるため、本年4月、知事部局に文化スポーツ部を設置します。
 文化スポーツ部においては、現在策定を進める「岩手県文化・スポーツ振興戦略」に基づき、文化・スポーツに関する施策の充実に加え、県民の健康づくり支援や観光振興との連携を推進します。また、ラグビーワールドカップ2019の成功に向け、受入態勢の整備・充実に取り組みます。
 希望郷いわて国体・希望郷いわて大会で培ったネットワークを活用し、市町村・関係団体をはじめとする多様な主体と連携・協働し、復興とふるさと振興の力にして参ります。

(若者・女性活躍の更なる展開)
 復興を成し遂げ、人口減少に立ち向かっていくためには、若者・女性の活躍が重要です。
 復興の現場では、柔軟な発想や行動力を持つ多くの若者が活躍しています。復興を力強く推進し、岩手の未来を創造していくためには、こうした若者の力が不可欠であり、県では若者の活躍を後押しする施策の充実を図っています。
 昨年9月に開催した「いわて若者文化祭」では、情熱を傾けて取り組んだパフォーマンスや作品の数々が発表されるとともに、若者同士の交流が広がりました。また、先日の「いわて若者会議」では復興支援や地域活動に携わる若者の団体が参加し、若者の力で更に岩手を盛り上げていくため様々な視点から熱い議論が交わされました。
 次代を担う若者の活躍は、岩手の未来の礎となるものであり、若者が主役となるような地域振興を進めて参ります。
 女性が社会のあらゆる分野で活躍することは、女性も男性も誰もが「生きやすい社会」につながります。本県では、平成26年に「いわて女性の活躍促進連携会議」を設置し、国に先駆け官民連携の取組を進めてきました。産業団体や経済団体との連携のもとで女性の活躍推進の輪は広がり、「モノづくりなでしこiwate」、牛飼い女子グループ、「北いわて仕立て屋女子会」など、女性のネットワークが活発化しています。
 こうした活動を更に展開していくため、本年4月、促進連携会議に「けんせつ小町部会」や「農山漁村で輝く女性部会」など5つの部会を設置し、横断的取組を進め、多様な分野で女性が活躍できる環境づくりを支援します。
 若者・女性の活躍を一層促進することにより、復興やふるさと振興をリードする人材を育み、将来にわたって創造性と多様性が発揮され、活力ある社会の実現を目指して参ります。

(戦略的な国際展開)
 国際情勢は、不確実性が増す一方、世界経済が緩やかな回復基調にあることに加え、アジアにおいては、これまでの高成長により中間層の拡大が見られます。このようなグローバルな購買力を取り込むことは、本県経済にとって大きなチャンスとなります。
 また、2010年の上海万博、2015年のミラノ万博と、2度の万博への出展を契機に培った海外とのネットワークを生かしながら、更に世界とのつながりを深めていくため、今年度策定する「いわて国際戦略ビジョン」に基づき、海外展開を進めて参ります。
 成長が見込まれる海外市場への展開を促進するため、まず、海外展開事業者の拡大と、ターゲットとする市場の特性に応じた販路拡大を推進します。県産品を観光資源として一層活用し、観光誘客と消費拡大の相乗効果を図ります。
 こうした海外展開の基盤を強固にするため、本県とゆかりのある専門人材、現地企業、海外県人会との連携を強化し、世界と岩手をつなぐ重層的なネットワークを築いて参ります。
 さらに、産学官連携によるグローバル人材の育成や、青少年交流など多面的な交流の推進と多文化共生への理解促進を図ります。
 昨年12月に開催された「リニアコライダーワークショップ2016」においては、世界中の研究者に北上サイトの優位性や地元の熱意をお伝えすることができました。ILCは国際学術研究拠点の形成や、研究施設の運用による雇用の創出、その他、経済波及効果が期待される国際プロジェクトです。
 世界に開かれた岩手の象徴ともなるILCの実現に向け、県の総力を挙げて官民一体で取り組んで参ります。

(全国知事会議岩手県開催)
 本年7月、本県で初めて全国知事会議が開催されます。職員派遣をはじめとする支援への御礼と復興の歩みを発信する絶好の機会でもあり、準備に万全を期して参ります。
 現在、全ての都道府県においては、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、地方創生に取り組んでいます。
 本県においても「岩手県ふるさと振興総合戦略」に掲げた「岩手で働く」「岩手で育てる」「岩手で暮らす」の3つの柱に基づき、施策を総動員し、ふるさと振興を本格展開しています。
 こうした地方の動きに対応し、東京一極集中の是正、地方重視の経済財政政策の推進を、他の都道府県と連動し訴えていきます。地方創生なくして日本の未来はなく、県内外の主体と連携し、強い地方経済に支えられた強い日本経済の実現を共に目指して参ります。
 

4 岩手の未来を支える行財政運営

 平成29年度の当初予算案は「未来につなげる復興ふるさと振興予算」として、第3期復興実施計画に基づく復興と台風第10号からの復旧・復興を最優先に、いわて県民計画第3期アクションプラン、ふるさと振興総合戦略を着実に推進する予算として編成しました。
 中期財政見通しにおいては、公債費が低減する一方、高齢化に伴う社会保障関係費の自然増などにより、厳しい財政状況が見込まれています。事業効果が高い施策への一層の選択と集中を進めるとともに、あらゆる手法で歳入確保を図り、財政の健全化に努めて参ります。
 東日本大震災津波や台風第10号からの復旧・復興の中、専門的知識を有する人材の確保に、引き続き、取り組みます。
 また、第3期復興実施計画やいわて県民計画第3期アクションプラン、ふるさと振興総合戦略の推進に当たっては、県民、企業、NPO、市町村など地域社会を構成する多様な主体が連携し、総力を結集していく地域経営の視点が不可欠です。職員の資質向上と組織体制の整備を推進し、県民・行政が一体となって地域課題の解決に向けて取り組んで参ります。
 

5 平成29年度の主要施策の概要

 平成29年度における具体的な施策についてでありますが、復興とふるさと振興の取組を、いわて県民計画に掲げる7つの政策に基づいた施策と一体的に推進して参ります。
 以下、具体的な施策の内容について申し上げます。

(復興計画に基づく施策の推進)
 はじめに、東日本大震災津波からの復興の取組についてであります。
 まず、復興計画の3原則の第一、「安全の確保」であります。
 津波により再び人命が失われることがないよう、防潮堤、水門などのハード整備とソフト対策により多重防災型まちづくりを進めます。
 安全なまちづくりの前提となる湾口防波堤の復旧・整備は、国によりかつてないスピードで進められています。平成29年度中に釜石港の完成が予定されており、復興道路と港湾施設の整備を踏まえ、港湾の利活用を促進して参ります。
 安全・安心なまちづくりに向け、被災地対策隊の継続設置や釜石警察署をはじめとする警察施設の復旧・整備を進めます。
 また、市町村の復興まちづくりが本格化し、防災集団移転促進事業や土地区画整理事業が進んでいることから、引き続き、早期完成を支援します。
 復興道路を軸に復興支援道路、復興関連道路の整備を進め、災害に強く信頼性の高い道路ネットワークを構築します。復興道路は、平成29年度中に三陸沿岸道路「山田宮古道路」など3区間の開通が予定されており、引き続き、国に全線の早期完成を働きかけます。
 また、復旧工事が進められているJR山田線の円滑な経営移管を支援するため、国や沿線市町と調整を進め、まちづくりと一体となった交通ネットワークを構築します。
 放射線影響対策に、引き続き取り組み、農林業系副産物等の早期処理に向け、関係市町を支援します。あわせて、市町村等と連携しながら、東京電力に対し必要な損害賠償請求を行います。
 復旧・復興の状況や津波の教訓を次世代に伝え、防災力向上に生かしていくため、高田松原津波復興祈念公園や震災津波伝承施設の整備を進めます。

 次に、「暮らしの再建」であります。
 内陸部に避難されている方も含め、一日も早く安定した生活を取り戻すことができるよう災害公営住宅を整備します。また、住宅再建に対する資金面での支援や、「被災者相談支援センター」「いわて内陸避難者支援センター」における相談体制を継続します。
 あわせて、新しい居住環境におけるコミュニティ形成のため、市町村を支援するコーディネーターの配置や、被災者の参画による生きがいづくりなどに対する支援を行います。
 被災地における介護・福祉サービスの充実、健康の維持・増進、こころのケアに、引き続き、取り組みます。きめ細かなケア活動を推進するため、「岩手県こころのケアセンター」での相談対応などのほか、生活支援相談員による見守りや相談支援を行います。
 また、県立高田病院の再建を着実に進め、平成29年度中の開院を目指すとともに、医療機関や社会福祉施設の再建を支援します。
 岩手の未来を担う人材を育むため、学校施設の復旧・整備、「いわての復興教育」やこころのサポートなどを進め、安全で安心な教育環境の整備・充実を図ります。今後も、被災児童のこころのケアや相談に対応するため、「いわてこどもケアセンター」におけるサポートや、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置を継続します。
 被災地における人手不足の解消に向け、市町村・関係機関等と連携し、人材の確保・定着支援や安定的な雇用の創出を推進します。

 次に、「なりわいの再生」であります。
 地域に根ざした水産業の再生に向け、被災施設の早期復旧や漁港の耐震・耐津波強化と併せ、漁業収入の確保・増大のための新たな生産体制の構築や、担い手の確保・育成に取り組みます。
 また、台風第10号により、東日本大震災津波と二重で被害を受けた、さけ・ます増殖体制の早期復旧に取り組みます。
 さらに、県産水産物の競争力・販売力を強化するため、高度な衛生品質管理体制の構築やカイゼンの導入、商品開発から販路開拓まで一体的な支援を行います。
 生産性・収益性の高い農業の実現に向け、農業生産基盤の復旧・整備や復旧農地の営農再開を支援します。あわせて、農地海岸保全施設の整備や海岸防災林の早期再生を進めます。
 原木しいたけの産地再生を図るため、栽培管理技術の徹底や原木の安定供給、価格高騰対策に取り組みます。
 また、首都圏でのフェア開催や効果的な広報展開により、安全・安心で、おいしい県産食材の魅力を発信します。
 被災地域の経済を支える中小企業や商業機能の再生・復興に向け、引き続き、事業再開や仮設店舗から本設店舗への移行を支援します。あわせて、復旧後の持続的な発展に向け、フォローアップの強化や起業、第二創業等の支援に取り組みます。
 港湾の利活用を促進するため、釜石港におけるコンテナ取扱量の増加に対応しガントリークレーンの整備を進めます。また、宮古・室蘭間のフェリー定期航路の開設に併せ、フェリーターミナルなど関連施設を整備します。
 沿岸地域の観光振興を図るため、世界遺産「橋野鉄鉱山」をはじめとする観光資源を生かした誘客促進や、外航クルーズ船の誘致に向けた調査・検討を行います。また、再認定審査を予定している三陸ジオパークは、世界ジオパーク認定も視野に来訪者の受入態勢の強化を進めます。
 さらに、高田松原等の砂浜再生や、「三陸DMOセンター」と連携した観光資源の更なる磨き上げに取り組みます。


(いわて県民計画に基づく7つの政策の推進)
 次に、いわて県民計画に基づく取組について、ふるさと振興の取組と併せ、申し上げます。
 まず、第1は、「『産業創造県いわて』の実現」であります。
 国際競争力の高いものづくり産業の振興に向け、企業誘致や県内企業の一層の業容拡大を支援します。自動車・半導体関連産業や医療機器関連産業など成長分野への県内企業の参入を促進し、産業技術の高度化を通じて新産業の創出を図ります。
 あわせて、三次元デジタル技術やIoT活用による「ものづくり革新」の取組を支援し、生産性向上・高付加価値化の促進を図ります。また、個人が物の作り手・メイカーとなることで豊かな社会を目指すメイカームーブメントを推進します。
 さらに、地元企業のニーズと大学等の研究シーズとのマッチングや、海洋など地域資源を生かした研究開発プロジェクトの導入を進め、科学技術によるイノベーションの創出につなげて参ります。
 地域経済の担い手として重要な役割を果たしている中小企業の経営力向上を図るため、経営革新や新規創業、若手経営者等の人材育成の取組を支援します。また、商品開発や販路拡大の取組への支援を通じ、地場産業の振興を図ります。
 国内外からの観光客の誘致を促進するため、魅力的な観光地づくりと効果的な情報発信を行います。特に、国際観光においては、東北各県と連携したプロモーション展開や、無料公衆無線LANの環境整備など受入態勢の充実に取り組みます。
 産業人材の確保・定着を図るため、地域ものづくりネットワークと連携した人材育成、首都圏の大学生等を対象にしたインターンシップの実施や、奨学金の返還支援など産学官金が連携した施策を展開します。
 また、「いわてで働こう推進協議会」を核として、若者・女性の県内就業の促進や働き方改革運動を推進します。企業が主体となった事業所内保育事業に対する支援をはじめ、やりがいがあり、安心して働くことができる雇用・労働環境の整備に関係機関・団体と連携し取り組んで参ります。あわせて、障がいのある方の就労を支援し、多様な就労の場の確保を図ります。

 第2は、「『食と緑の創造県いわて』の実現」であります。
 意欲と能力のある生産者が、効率的で安定した経営を展開できるよう経営の高度化や規模拡大の取組を支援し、岩手の農林水産業を担う経営体を育成します。特に、林業においては本年4月に「いわて林業アカデミー」を開講し、将来的に林業経営の中核となる人材を養成します。
 また、農林水産業の持続的発展に向け、ほ場の大区画化や排水対策、低コスト再造林技術の普及定着など基盤整備の推進や、新たな栽培魚種として有望なサクラマスの資源造成に取り組みます。
 若者や女性が参入しやすく、生産性・市場性の高い農業の実現に向け、ICTなど先端技術を活用したスマート農業を推進します。
 また、本県の気候や土壌の特性を生かした高品質なワインを生み出す「いわてワインヒルズ」プロジェクトを展開します。
 本年9月、和牛のオリンピックとも称される「全国和牛能力共進会」が宮城県で開催されます。総合優勝を目指し、生産者をはじめ関係機関・団体と一丸となり、出品候補牛の育成を進めるとともに、優良な肉用牛の生産拡大に取り組みます。
 県産農林水産物の高付加価値化を図るため、地域ならではのストーリー性や発信力のある商品開発を支援し、地域ぐるみの6次産業化を進めます。
 また、国内外において、商談・交流機会の創出や効果的なプロモーションを展開し、岩手ブランドの確立と販路拡大に取り組みます。
 昨年の「銀河のしずく」に続き、本年、秋には県産米の最高級品種「金色の風」が本格デビューします。全国の消費者から長く愛されるコメ産地の確立に向け、徹底した品質管理や良食味米の生産体制を強化します。平成30年産から見直される米政策への対応も見据え、2つの品種の相乗効果を図りながら、生産者や関係団体等と連携し、県産米のブランド価値の向上に努めます。
 こうした本県の優れた農林水産物を育む、活力ある農山漁村の創造に向け、引き続き、「いわて農業農村活性化推進ビジョン」に基づく、地域が主体となった活性化の取組を支援します。

 第3は、「『共に生きるいわて』の実現」であります。
 医療を担う人材の確保・定着を図るため、奨学金による医師養成や勤務環境の改善支援、看護職員の県内定着や潜在看護職員の復職支援等に取り組みます。あわせて、医師偏在の解消に向け、新たな制度構築を国などに働きかけて参ります。
 また、ICTを活用した医療機関の役割分担と連携を進め、周産期母子医療センターを中心とする総合的な周産期医療体制を充実させます。さらに、救急医療体制の充実・強化や災害時の医療確保に取り組みます。
 医療提供体制の構築や健康寿命の延伸に向け、地域医療を支える県民運動や、「岩手県脳卒中予防県民会議」による「いわて減塩・適塩の日」の普及活動など、県民総参加型の取組を進めます。
 高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らすことができるよう、地域包括ケアシステムの構築支援や、介護人材の確保・育成に取り組みます。
 安心して子どもを生み育てられる環境の整備に向け、結婚支援、安心・安全な出産環境の充実、多様な保育サービスの提供支援に取り組みます。特に、若者の出会い・結婚支援の充実を図るため、「“いきいき岩手”結婚サポートセンター」の拠点を増設するほか、出張サービスを拡充します。 
 地域の子ども・子育て支援体制の充実に向け、保育士等の人材確保に取り組むとともに、市町村が実施する放課後児童健全育成事業や子育て支援拠点事業を支援します。
 また、子どもたちの健やかな成長を支えるため、児童虐待の発生予防、早期発見・早期対応を行い、「いわての子どもの貧困対策推進計画」に基づき、教育や生活を支援します。
 自殺死亡率の低下に向け、医療、介護との連携、相談支援体制の強化など総合的な自殺対策に取り組みます。
 障がいのある方が必要なサービスを利用しながら安心して生活できるよう、市町村や事業者と連携し、施設整備や相談支援体制を一層充実させて参ります。
 本年10月、新たな障がい児療育拠点として、県立療育センターと県立盛岡となん支援学校の完成を予定しています。超重症児の受入など新たなニーズに対応し、医療・福祉・教育が一体となった総合的な支援体制を強化します。また、医療的ケアを必要とする在宅の超重症児・超重症者を介助する家族の負担軽減を図って参ります。

 第4は、「『安心して、心豊かに暮らせるいわて』の実現」であります。
 本県に甚大な被害をもたらした台風第10号、4月の熊本地震、10月の鳥取県中部の地震など、昨年、日本列島は度重なる大きな災害に見舞われました。大規模自然災害が発生しても、「致命的な被害を負わない強さ」と「速やかに回復するしなやかさ」を持った安全・安心な地域社会の構築に向け、「岩手県国土強靱化地域計画」に基づく施策を総合的かつ計画的に進め、岩手の強靱化を推進します。
 県・市町村・関係機関・地域が連携・協力し、自らの身を自ら守る意識の醸成、地域の安全を地域が守る体制の整備、実効的な防災体制の整備に取り組み、地域防災力の強化を図ります。
 安全・安心なまちづくりに向け、地域の実態に即した警察施設の整備や、県民・企業・行政が連携した犯罪防止、犯罪が起きにくい環境づくりに取り組みます。また、高齢者の交通事故防止対策を重点的に進めます。
 さらに、消費者被害を未然に防止するため、市町村の消費生活相談体制に対する支援や消費者教育など、消費者行政の充実に引き続き取り組みます。
 男女が共に尊重し合い、個性と能力を発揮できる地域社会の形成に向け、引き続き、男女共同参画の意識啓発や女性に対する暴力の根絶に努めます。
 多様な主体の連携による地域コミュニティの活性化を図るため、市町村・NPO・関係団体と連携し、地域コミュニティ活動を担う人材の育成を進めます。また、NPOの運営基盤の強化を支援し、多様な市民活動を促進します。
 本県には、地域おこし協力隊や復興支援員をはじめ県外から移り住み、地域づくりの中心として活躍している方々がいます。人の流れを創出し、移住者が地域活動や経済活動の担い手として活躍する環境づくりに向け、積極的な情報発信や移住・定住相談体制の充実に加え、定住促進に取り組む市町村への支援を拡充して参ります。

 第5は、「『人材・文化芸術の宝庫いわて』の実現」であります。
 岩手の未来を担う人材の育成に向け、「岩手県総合教育会議」を活用し、「知・徳・体」を備え調和のとれた人材を育んで参ります。また、私立学校の特色ある教育活動を支援します。
 教育環境の充実に向け、県立久慈高等学校の改築をはじめ学校施設の計画的な整備を進めます。また、特別支援学校の整備や、ICT機器を活用した実践的・効果的な学習を推進し、特別支援教育の充実に取り組みます。さらに、県民理解の醸成に努めながら、インクルーシブ教育を推進します。
 児童生徒が目指す進路を実現し、社会人、職業人として地域で活躍することができるよう、産業界と連携しキャリア教育の充実に取り組みます。 
 いじめの未然防止や早期解決を図るため、学校における教育相談体制の充実、関係機関・地域との連携体制を強化します。
 多彩な文化芸術が創造、継承され、広く発信されるよう、引き続き、文化芸術活動への支援を行います。海外との絆も生かしながら、県民が優れた文化芸術に触れ、参加する機会を創出します。
 また、一戸町の御所野遺跡を含む北海道・北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録、平泉の文化遺産の拡張登録に向けた取組を促進します。
 希望郷いわて国体・希望郷いわて大会を通じて高まった競技力や県民のスポーツに対する関心を維持・発展させるため、計画的な選手育成や指導者の養成、スポーツ医・科学サポートの充実に取り組みます。
 また、県民誰もがスポーツを楽しむことができる環境づくりを進め、ラグビーワールドカップ2019や復興五輪を理念に掲げる東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の機運醸成を図って参ります。

 第6は、「『環境王国いわて』の実現」であります。
 低炭素社会や循環型地域社会の形成に向け、「温暖化防止いわて県民会議」を中核とした県民運動の展開や、再生可能エネルギーの導入促進に取り組みます。
 一戸町の高森高原風力発電所、盛岡市の簗川発電所の建設を進めるとともに、「岩手県風力発電導入構想」の具体化に向け、市町村と連携し事業者への導入支援に取り組みます。
 公共関与による産業廃棄物処理体制を構築し、適正処理と県内処理を促進するため、次期産業廃棄物最終処分場の整備を進めます。
 野生動物を取り巻く環境変化を踏まえた個体数管理に取り組み、自然生態系や農林業に影響を及ぼす野生鳥獣の捕獲体制の整備を進めます。
 多様で豊かな環境の保全に向け、自然公園の整備や保全対策の推進、県民の環境学習・環境保全活動への主体的な参画を促進して参ります。

 第7は、「『いわてを支える基盤』の実現」であります。
 被災したインフラの復旧・整備に最優先で取り組むとともに、全国的に多発している豪雨災害から県民の生命・財産を守るため、治水対策、土砂災害対策を推進します。
 県内産業の振興や地域間交流の促進に向け、道路ネットワークの構築やスマートインターチェンジの整備を進めます。また、交通隘路の解消や防災対策、橋梁の耐震化に取り組み、日常生活を支える安全な道づくりを推進します。
 いわて花巻空港の国内路線の維持・拡充、国際定期便の就航に向け、受入態勢の強化や国際チャーター便の誘致・拡大に取り組みます。また、地域の生活を支える公共交通の維持・確保を図ります。
 豊かで快適な生活環境の確保に向け、汚水処理施設の整備に関する構想の策定や、公民連携による空き家の利活用促進に取り組みます。
 必要な社会資本が将来にわたって機能し続けるよう、計画的な維持管理や長寿命化に取り組みます。また、こうした社会資本を支える建設業従事者は、年齢構成が50代以上に偏っていることから、担い手の育成・確保のため、女性技術者のネットワークの構築や、若者・女性が働きやすい職場環境の整備を支援して参ります。

 さらに、いわて県民計画の7つの政策に加え、各広域振興圏において地域の創意が発揮された取組を進めて参ります。特に、県北圏域においては、食・漆・アパレルなど優れた地域資源を生かした産業振興や、交流人口の拡大に取り組みます。
 

6 むすび

 希望郷いわて国体・希望郷いわて大会の成功で、私たちは岩手の歴史の新しいページを開きました。
 国体の招致を表明したのは、今から9年8カ月前の知事演述においてです。当時、地方は財政の逼迫や経済の停滞に直面し、県民所得の低迷や雇用情勢の回復の遅れなどにより、大都市圏と地方との格差が深刻化し、人口の社会減が拡大するなど危機のさ中にありました。
 岩手はさらに、東日本大震災津波という未曽有の大災害に襲われましたが、大きな衝撃と甚大な被害の中から、県民の底力が発揮され、全国、海外から様々なつながりの力をいただきながら、復興という大事業に県民一丸となって取り組んで参りました。
 そして、昨年、「東日本大震災復興の架け橋」を冠称に掲げた、希望郷いわて国体・希望郷いわて大会では、選手の活躍や県民の参画を通じ、やればできるという自信、誇り、そして希望を、私たちは手にしました。
 ウエイトリフティング競技に出場した、岩泉町出身の内村湧嬉選手は、台風第10号で甚大な被害を受けた、ふるさとへの思いを込めてライバルに競り勝ち、7年ぶりの優勝を飾りました。ふるさとへの思いが困難を打開し、勝利を導きました。
 そして、それは地方の危機や大災害を乗り越え、国体を成功裏に開催することができたという、危機を希望に変えた瞬間でした。
 希望郷いわて国体・希望郷いわて大会は、私たち岩手県民が、岩手の過去・現在・未来に思いを致す機会となりました。
 平成29年度は、次期総合計画の策定に向け、岩手のあるべき姿とその実現のために、私たち岩手県民がなすべきことを考える年でもあります。その中で、幸福をキーワードに、所得などの経済的要素に加え、岩手が持つ多様な豊かさやつながりの価値などにも着目しながら、県民みんなで新しい岩手の姿を描いていければと思います。
 今議会に提案しております「未来につなげる復興ふるさと振興予算」により復興とふるさと振興に取り組み、希望郷いわて国体・希望郷いわて大会のレガシーを生かしていけば、私たち岩手県民は、必ずや、子や孫の世代のためにも確かな未来を切り拓くことができると信じます。
 ここにおられる議員の皆様並びに県民の皆様の深い御理解と更なる御協力を心からお願い申し上げ、私の所信表明といたします。
 

添付ファイル

平成29年2月県議会定例会知事演述全文

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