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内外情勢調査会盛岡支部懇談会における知事講演「いわてソフトパワー戦略 ~考え方と展開~」

ID番号 N52444 更新日 平成29年2月24日

とき:平成28年12月6日
ところ:ホテルロイヤル盛岡

はじめに

 東日本大震災津波から5年9か月が経過しようとしています。東日本大震災津波、そして8月30日の台風第10号災害により犠牲になられた方々に哀悼の意を表しますとともに、被害に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げます。
 また、東日本大震災津波発災以降、全国、さらには海外から寄せられました多くの御支援に改めて感謝申し上げますとともに、先の希望郷いわて国体・希望郷いわて大会の開催に当たり皆様からいただきました御支援、御協力に御礼を申し上げます。
 東日本大震災津波からの復興におきましては、整備を進めている災害公営住宅は本年度末までに約8割が完成します。また、被災した県立病院にあっては、本年度、大槌病院と山田病院が開院し、高田病院は来年度に開院の予定であるなど、着実に復興の取組を進めているところです。
 一方、依然として岩手県だけで1万5千人以上の方々が応急仮設住宅等での生活を続けている状況にあり、恒久的な住宅への速やかな移行が復興の最重要課題となっています。
 引き続き、東日本大震災津波、台風第10号災害からの復旧・復興に、関係機関と連携しながら、被災地や被災者の実情に沿ってしっかりと対応していきます。
 さて、今日は「いわてソフトパワー戦略~考え方と展開~」と題しまして、復興と地方創生に通じます岩手県政の取組について講演させていただきます。いわてソフトパワー戦略の考え方について、そして県政におけるソフトパワーの展開について、という順でお話します。

1 いわてソフトパワー戦略の考え方

 平成19年4月、知事に就任したときに「新地域主義戦略」と「いわてソフトパワー戦略」を政策の二大戦略として打ち出しました。
 「ソフトパワー」というのは、ハーバード大学の国際政治学者、ジョセフ・ナイ教授が提唱していたものです。私なりに一言でまとめますと、「文化的魅力」と「道義的信頼」によって相手を動かす力のことです。
 その背景にあるのは、国際政治における主要な力が軍事力などの物理的強制力から経済力へ、そして知識・情報力へとシフトしてきたという考え方であり、このパワーシフトの考え方が地方行政についても当てはまると私は考えています。
 戦前の行政は、徴兵、徴税から始まり、様々な取締りなどの物理的強制力が決め手となっていました。これを行政の発展段階の第一段階としますと、第二段階は、戦後の高度成長期で、開発や社会保障分野を中心に財政というお金の力で主要な社会的課題の解決を目指しました。そして近年では、知識・情報の力で様々な課題を解決していくことが求められるようになり、これが第三段階だといえます。ソフトパワーは、この知識・情報の力の一環でもあります。
 そこで、いわてソフトパワー戦略ですが、岩手県の豊かな自然、脈々と伝えられる歴史・文化、実直な人間性、もてなしの心などを源泉として培われてきた、世界に誇れる平泉文化等の歴史的資産や伝統芸能といった「文化的魅力」、そして、県民のまじめさ、勤勉さとして表される「道義的信頼」を高め、それを岩手県政のけん引力にしていこうという戦略です。
 
 岩手が持つ文化的魅力の分かりやすい例としては、平泉などの歴史的文化をはじめ、伝統工芸品、温泉などの多様な観光資源、遠野物語に代表される民話や生活文化などが挙げられます。また、岩手の道義的信頼をたどれば、新渡戸稲造や宮沢賢治の高い志、県民のまじめさやおもてなしの心などが挙げられます。
 ここで、岩手県出身の俳優 村上弘明さんが主演する岩手県魅力発信PR動画「~世界遺産・平泉から~ いわてに息づく、清衡の心。」を御覧ください。(動画は岩手県ホームページから御覧いただけます。)岩手県では、PR特使として、陸前高田市出身で、映画、テレビなどで活躍されている村上弘明さんに「いわて☆はまらいん特使」に就任いただいています。(「はまらいん」とは岩手県沿岸南部を中心とする方言で「どうぞ加わってください」という意)
 世界遺産平泉を全面に打ち立てた観光宣伝でもありますが、平泉の都というのはもともと前九年合戦、後三年合戦といった長い戦乱で荒廃した戦災からの復興としてつくられていったという経緯を、今回、東日本大震災津波からの復興を進める岩手の姿、県民の思いと重ね合わせ、文化的魅力と道義的信頼を合わせたソフトパワーとして感じとっていただき、岩手に行ってみようか、岩手のものを買ってみようか、企業・会社で岩手の人を採用してみようか、といった行動に結び付ける、人を動かす力にしていければという思いでこういった動画を制作しています。
 
 いわてソフトパワー戦略は、岩手県の持つ価値や魅力を地域発の商品・サービスに結び付け、岩手ブランドとして確立し、そのブランド力を高めていこうとするものでもあります。
 岩手ブランドの積極的な発信を通じて国内外から高い評価や信頼を獲得し、それによってブランド力をさらに高め、いわゆる外貨の獲得でありますとか雇用創出といった好循環をつくり出し、地域産業の振興や県民所得の向上といった経済的効果につなげていきたいということです。
 さらには、経済的な効果のみならず、高い評価や信頼の獲得によって、地域に対する誇りや心の豊かさ、満足感、地域への帰属意識などが育まれるという効果も期待できます。

2 ソフトパワーの展開

 今、岩手県政は、東日本大震災津波からの復興とふるさと振興(地方創生)が二大基軸でありますが、ソフトパワーの考え方は、復興とふるさと振興を含め、県の政策推進上のあらゆる分野で重要です。
 そこでここからは、ソフトパワーの具体的展開の事例を紹介します。その中でも特に、ソフトパワーの祭典でもありました「希望郷いわて国体・希望郷いわて大会」と、それに関連した文化・スポーツ関連の施策を紹介し、またその後、県政各分野の施策について具体例を紹介していきます。

(1)希望郷いわて国体・希望郷いわて大会のレガシーを次世代へ

 平成19年6月20日、岩手県議会定例会の知事演述、私にとって初めての所信表明演述でありましたが、そこで国体招致を表明しました。
 昭和45年、私が物心つく頃最初の岩手国体が開催され、当時はテレビからも映画館でもその頃つくられたばかりの「岩手県民の歌」が流れていました。この岩手県民の歌の最後のところ、「岩手、岩手、ふるさと岩手、大空に描く望みよ」と歌われているのですけれども、この明るい歌詞やメロディーとともに、当時大人たちは力強くふるさと岩手の発展に邁進していて、周囲は希望にあふれ、6歳だった私も確かな希望を抱くことができました。
 私がいただいたこの希望を、次の世代につないでいかなければならないということを、この演述の最後の部分で述べました。一巡目国体のときにこの岩手県民の歌で歌われた、大空に描く望みよ、というその望み、希望が、46年後、希望郷いわて国体という希望に引き継がれたわけであります。
 希望郷いわて国体・希望郷いわて大会の開催方針、実施目標には、復興の力となる大会、開かれた大会、岩手の魅力を再認識し全国へ発信する大会、岩手らしいおもてなしの心あふれる交流を広げる大会、広く地域に根ざした大会などが盛り込まれ、ソフトパワー戦略に沿ったものでありました。
 

《希望郷いわて国体(第71回国民体育大会)》

 希望郷いわて国体・希望郷いわて大会は、東日本大震災津波の被災地で初めて開催する復興国体であり、「東日本大震災復興の架け橋」という冠称をいただきました。
 希望郷いわて国体は、冬季国体と本大会の全ての競技を県内で行う完全国体として、天皇皇后両陛下をはじめ、多くの皇室の皆様をお迎えして開催し、大成功に終えることができました。県と県内市町村や企業、団体との信頼関係も高まり、県外から高い評価、高い信頼を得ることができたと考えています。
 本大会開催を目前に台風第10号による被害を受け、岩泉町では県内市町村で唯一、競技実施を断念せざるを得なかったことは残念でありましたが、「広げよう、感動。伝えよう、感謝。」のスローガンのもと、スポーツの感動を岩手から全国に広げ、東日本大震災津波以降、全国、そして海外から寄せられた御支援に感謝を伝えることができました。
 また、岩手県選手団は、男女総合成績・天皇杯第2位、女子総合成績・皇后杯第2位、東京都を除く道府県でトップとなりました。大会初日からの優勝・入賞ラッシュに、県民は驚き、その驚きはやがて感動に変わり、感極まる中で閉会を迎えました。ひたむきに努力し、頑張る選手、それを応援する観客、大会を支えるボランティアやおもてなしのスタッフの姿は、県民の自信と誇り、そして希望につながったと思います。
 

《希望郷いわて大会(第16回全国障害者スポーツ大会)》

 国体の熱気冷めやらぬ中、皇太子殿下の御臨席を賜り開会式が行われた希望郷いわて大会も、選手団サポートボランティアをはじめ多くのボランティアの参加のもと、大成功のうちに終了しました。
 今年の7月26日に発生した神奈川県相模原市の津久井やまゆり園での事件を受けて、私は8月8日に知事談話を発表しました。その中で「全国障害者スポーツ大会と、それに併せて開催される文化プログラムや関連の行事を通じて、全国各地から集う皆さんと、改めて、障がいのある人もない人も、お互いの個性や尊厳を認め合い、共に支え合う社会を目指すということを、この岩手の地で確認し、全国に発信していく。」と述べました。
 希望郷いわて大会で全国から集まった選手たちが、自らの可能性を広げ、ハンディを乗り越えようとする姿に感動と共感が生まれ、そして障がいへの理解と交流の輪が大きく広がり、共生社会の実現に貢献することができたと思います。
 

《希望郷いわて国体・総合開会式》

 希望郷いわて国体の開会式を振り返りますと、オープニングイベントでは、岩手が舞台となった朝の連続テレビ小説「どんど晴れ」と「あまちゃん」に出演した女優の宮本信子さんに、東日本大震災津波の時の思いを児童が綴った作文を朗読していただきました。
 天皇皇后両陛下の御臨席を賜りました式典前演技では、先ほども紹介した村上弘明さんにストーリーテラーを務めていただき、第一章では「雨ニモマケズ」と題し、約250名の小学生と特別支援学校の生徒が詩の暗唱と風の又三郎の格好でのパフォーマンスを披露してくれました。
 式典前演技第二章では「前へ!」と題し、大漁旗を持った沿岸の高校生、釜石の虎舞、北上の鬼剣舞が登場し、復興への力強い歩みを伝統芸能で表現しました。続く第三章では「ふるさとの風」と題し、岩手・宮城・福島の3県合同合唱団の歌声やダンス、新体操で東北の新たな絆を表現しました。
 締めくくりの第四章では「希望郷いわて」と題し、700名による盛岡さんさ踊りがグラウンドを埋めつくし、オリンピック水準のフィナーレとなったと思っています。岩手の郷土芸能については、天皇皇后両陛下も大変お気に召され、強く印象に残るものであった御様子で、伝統を継承する県民への労いや励ましの御言葉を賜りました。
 

《国体・大会プラスの取組》

 今まで他の都道府県での国体にはなかった岩手独自の新しい企画として、「国体・大会プラス」というものがありました。
 国体・大会プラスは、スポーツに加え、文化芸術、さらにテクノロジーや食など多彩な取組を通じて、より多くの県民の皆さんに国体・大会に参加していただきたいという考えでスタートした取組です。二巡目国体ならではの取組として、沿岸各地や盛岡市において国体・大会開会式のパブリックビューイングを実施したほか、インターネット中継も行いました。
 他の新機軸の取組としては、詳しくはまた後から説明しますけれども、「超人スポーツ」、「まちサポいわてアプリ」、「イングレスミッション」、「いわて人間讃歌イラスト」。また、民間の取組では、盛岡市内のそば屋さんで行われた、わんこそばの杯数を都道府県ごとに競う「わんこくたい」といったものが挙げられます。
 ツイッターやフェイスブックの活用も二巡目国体ならではのものでした。ツイッターのトレンド検索ランキングで「#希望郷いわて国体」が1位になった瞬間もあり、最新の情報通信技術の活用で、ローカルであると同時にオールジャパンのイベントとして今風の盛り上がりを見せました。
 希望郷いわて国体・希望郷いわて大会は、2020年東京オリンピック・パラリンピックのあるべき姿を先取りして提案しようという思いも込めて準備したところがあり、スポーツ・文化と復興というテーマで日本が一つになることができるということを岩手で示すことができたのではないかと思います。
 

《いわて人間讃歌イラスト》

 「いわて人間讃歌イラスト」は、「ジョジョの奇妙な冒険」で人気の仙台市出身の漫画家 荒木飛呂彦さんに描いていただきました。(「いわて人間讃歌イラスト」は岩手県ホームページから御覧いただけます。)
 「人間讃歌」というのは、スポーツ、共生社会、文化、復興、ふるさと振興の共通のテーマですが、「ジョジョの奇妙な冒険」という作品のテーマでもあります。ジョジョファン、あるいは荒木飛呂彦さんのファンは、全国はもとより、アジアや欧米にも大勢います。
 「いわて人間讃歌イラスト」は、国体という戦後日本のお馴染みのイベントと、クールジャパンの最前線であるマンガのかつてないようなコラボであり、そのただならなさを多くの人たちに感じてもらえればと思います。
 岩手県のマークや岩手県を代表する文物が描かれていて、オーソドックスに岩手らしいイラストであると同時に、マンガスタイルとリアルが融合した今までなかったような全く新しいイラストでもありまして、希望郷いわて国体・希望郷いわて大会とそのレガシーを象徴するのにぴったりの作品だと思っています。
 

《文化・スポーツの振興》

 今国体においては、天皇杯順位、皇后杯順位ともに第2位を成し遂げた各競技団体のノウハウの蓄積や、チーム岩手として力を結集して取り組んだ経験などが今後の競技力向上やスポーツ振興への大きなレガシーになります。
 また、文化についても開閉会式や国体・大会プラス、様々な文化プログラムの経験や成果が今後に向けての大きなレガシーになります。
 このような希望郷いわて国体・希望郷いわて大会のレガシーを踏まえて、県では、文化・スポーツ振興戦略を策定します。また、戦略を推進するため文化・スポーツに関する事務を知事部局に一元化し、その事務を担う新たな組織を設置します。
 

《ラグビーワールドカップ2019TM釜石開催》

 文化・スポーツ振興戦略に掲げる重点施策をいくつか紹介します。
 まず、ラグビーワールドカップ2019釜石開催です。昨年3月、ラグビーワールドカップ2019の全国12開催都市の一つに岩手県・釜石市が選ばれ、東日本大震災津波で甚大な被害を受けた釜石市鵜住居地区が会場に決定しました。希望郷いわて国体とはまた違った角度から、スポーツ、共生社会、文化、復興をテーマに、岩手沿岸・三陸を中心に岩手の魅力を高め、国内外に発信していきたいと思います。
 そして、復興五輪を理念に掲げる2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会においても、事前キャンプ地の誘致や様々な文化プログラムへの参画等を通じて、岩手の魅力と復興の姿を国内外に発信していきます。
 

《プロスポーツ等との連携》

 次に、プロスポーツチーム等との連携や、スポーツツーリズムによる地域活性化です。バスケットボールBリーグ2部の岩手ビッグブルズ、サッカーJ3のグルージャ盛岡、ラグビートップイーストリーグ・Div.1の釜石シーウェイブスが岩手県を本拠地として活躍しています。これらのスポーツチームと連携し、地域におけるスポーツ教育や応援イベントの開催などにより、各種スポーツの普及と競技力向上、地域とチームの一体感の醸成を図ります。
 また、プロ野球パ・リーグの年間MVPに選ばれた大谷翔平選手が岩手県出身であるということは、岩手にとって計り知れないほど大きな財産です。他にもプロ野球では、菊池雄星選手、銀次選手、畠山和洋選手、そしてサッカーJリーグの小笠原満男選手、プロボクシングの八重樫東選手、リオ五輪陸上日本代表の高橋英輝選手など、多くの県出身選手が国内トップクラスあるいは国際的な活躍をしています。
 全国、そして世界に通じるトップアスリートの育成が、岩手にとって現実的に求められる政策テーマとなっています。スポーツを通じて更なる国内外との交流の拡大や経済効果の拡大を目指します。「いわてスポーツコミッション(仮称)」を設置し、各種競技大会やスポーツ関連イベントを積極的に誘致していきます。
 

《アール・ブリュット》

 アール・ブリュット、障がいを持つ方々の芸術も振興していきます。岩手県では、いわて・きららアート・コレクションの開催や、るんびにい美術館での作品展示と創作活動など、障がい者の文化芸術活動の歴史があります。
 アール・ブリュットは、東京オリンピック・パラリンピック競技大会で地方が主役となる取組の大きな要素になると期待されています。今年10月に鳥取県米子市で開催された「東京オリンピック・パラリンピックに向けた障がい者アートフェスタ2016」に出席しました。これは「2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた障がい者の芸術文化活動推進知事連盟」のキックオフ・イベントでもありました。全国各地での活動とも連携を図りながら、岩手のアール・ブリュットの取組に様々な支援を行っていきます。
 

《世界遺産の価値・理念の発信と普及》

 岩手県には、平泉と釜石・橋野鉄鉱山という2つの世界遺産があります。
 平泉の文化遺産は、「人と人との共生」、「人と自然との共生」の理念のもと、この世に浄土を創ろうと築かれ、敵も味方も関係なく、また、人間だけではなくあらゆる生命の死を悼もうという奥州藤原氏初代清衡公の願文が残されています。
 橋野鉄鉱山は、現存する日本最古の洋式高炉で、この高炉を完成させ、日本で初めて鉄の連続出銑を成功させたのが盛岡藩士 大島高任です。大島高任は、1863年、明治維新の5年前に「藩政改革書」を記し、その中で義務教育や殖産興業などの明治日本の近代化路線をそのまま先取りするような政策論を展開して、盛岡藩を天下無双の国にしようと述べていました。その先見性と志の高さは驚くべきものです。
 平泉世界遺産登録5周年を迎える節目の今年は、11月21、22日の両日、盛岡市のアイーナをメイン会場にして「世界遺産サミット」を開催しました。このサミットには自治体や観光関係者等約450人が出席し、平泉、釜石の現地視察のほか、世界遺産に関する魅力発信、地域連携、保全・活用等に関して広く意見交換を行い、そして2016世界遺産サミット「岩手宣言」を行いました。
 平泉の文化遺産、橋野鉄鉱山、そしてさらに世界遺産登録を目指す北海道・北東北の縄文遺跡群の御所野遺跡が有する価値や理念を県内外に広く発信・普及していきます。
 

《岩手発・超人スポーツ》

 次に、「岩手発・超人スポーツプロジェクト」です。
 超人スポーツは、人間拡張工学に基づいて、人間の能力をテクノロジーを用いて拡張し競技するもので、年齢や身体能力、さらには障がいの有無に関わらず誰もが楽しむことができる可能性を持っています。
 岩手県が超人スポーツに取り組んだきっかけは、昨年の「いわて若者文化祭2015」の中で、評論家の宇野常寛さんと私が対談し、地方が主役となる2020年東京オリンピック・パラリンピックのモデルとなるよう、希望郷いわて国体・大会の開催に合わせて超人スポーツを実施しようと意気投合したことでした。
 これを受け、希望郷いわて国体・希望郷いわて大会のプレイベントとして開催した今年の「いわて若者文化祭2016」において、県内の若者も参加して超人スポーツの発表を行いました。「ロックハンドバトル」は、盛岡市の三ツ石神社の伝説を題材としたオリジナルマンガに登場する戦闘を再現した競技です。去る11月23日には、国のオリンピック・パラリンピック基本方針推進調査に係る試行プロジェクトの一環として、東京都内で開催された第1回超人スポーツゲームズでも実演されました。
 東京オリンピック・パラリンピックの開催に合わせて、超人スポーツも大々的に繰り広げられ、岩手が舞台となったり、あるいは岩手の若者が活躍したりすることを期待しています。
 

《いわてマンガプロジェクト》

 次に、従来の文化の枠を超えた取組の一つとして、「いわてマンガプロジェクト」を紹介します。これは、マンガを通じて、岩手の文化、暮らし、景観、もてなしの心など、岩手県の魅力を発信する取組です。
 マンガに着目したきっかけは、平成21年に花巻市の萬鉄五郎記念美術館と岩手町の石神の丘美術館で共同企画「マンガ百花繚乱-いわての漫画家50の表現-展」が開催されたことでした。岩手県出身あるいは岩手県在住の漫画家が50名以上もいらっしゃるということに感銘を受けまして、その皆さんに協力いただいてマンガを1冊の本にまとめて全国に発信したらどんなにいいだろうかと考えプロジェクトをスタートさせました。
 平成23年には「コミックいわて」第1弾を全国販売しました。地方自治体がマンガを発行するという全国でも例を見ない新しい取組が話題となり、当初予定の1万部を大きく上回る3万6千部を発行しました。「岩手県知事責任編集」という帯も大きな反響を呼びました。
 マンガを活用した取組は、観光パンフレットやジオパーク、ILC国際リニアコライダー、子育て支援などの施策PRにも及び、マンガやアニメのファンが舞台となった土地を訪れる聖地巡礼に地域を挙げて取り組む例も見られるなど、県全体に様々な形で広がっています。
 聖地巡礼で最近話題になりましたけれども、軽米町が「ハイキュー‼」というマンガ、アニメの聖地として評判です。「ハイキュー‼」というのは、週刊少年ジャンプで「ONE PIECE」の次くらいに人気がある作品で、国内はもとより台湾など外国からも「ハイキュー‼」ゆかりの地を辿るために軽米町に来るという人たちがどんどん増えています。
 「いわてマンガプロジェクト」は、ツイッターなどを通じて全国的に知られるようになり、平成24年11月には法政大学のイノベーティブ・ポリシー賞を受賞しました。この賞は、全国の自治体や地域団体等を対象に、先進的でユニークな政策を表彰するもので、岩手県のマンガを活用した情報発信やブランディングの取組を高く評価いただいたものです。
 
 去る11月26日には、今年で6回目となる「いわてマンガ大賞コンテスト」の表彰式を行いました。表彰作品は、高い画力、よく練られたストーリーなど、将来性や人間力を感じさせるものばかりでした。優秀賞を受賞した作品の中には、台風第10号で甚大な被害を受けた岩泉町の龍泉洞をテーマにしたものもあり、マンガというソフトパワーがこれからの復興の力にもなっていくと思わせられました。
 また、県では、本年度、岩手県に貢献した個人・団体、作品等を表彰する「マンガ郷いわて特別賞」を創設しました。その第1回受賞者は、代表作「銀河鉄道999」で知られる漫画家 松本零士さんです。「銀河鉄道999」は、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の世界に通じるものがあり、この「銀河鉄道999」をきっかけに宮沢賢治に関心を抱くようになったという読者も多く、岩手の魅力発信に大きな貢献をいただきました。松本零士さんには、副賞として、岩手県産オリジナル米「銀河のしずく」99.9キロと、“銀河鉄瓶”といった趣の銀色の南部鉄瓶を贈呈しました。
 マンガによる地域振興は、全国的そして海外にも広がるつながりの中で着実に効果が出ているものと思います。
 

《岩手発の地域振興と他地域への波及・連携》

 岩手の地域資源には、見方によっては存在しないものといいますか、ある見方によってしか存在しないものがあります。「妖怪」であります。
 地域振興のためには、妖怪の力も借りようということで、妖怪文化というテーマで共通する岩手、鳥取、徳島の3県が連携し、お互いの地域の文化や魅力を発信するイベント「怪フォーラム」というものを開催しています。
 故水木しげる先生を会長とする世界妖怪協会が、世界遺産ならぬ「怪遺産」として、鳥取県境港市、徳島県三好市、そして岩手県遠野市を認定しました。世界妖怪協会には、荒俣宏さん、京極夏彦さん、宮部みゆきさんという当代一流の作家の方々と民俗学・妖怪研究の第一人者、小松和彦国際日本文化研究センター所長が参加されておりまして、皆さん、怪フォーラムに来てくださいます。
 先月、小松和彦先生が国の文化功労者に選ばれました。岩手県の妖怪関係事業もさらに強化が進むことが期待されます。
 
 先月、盛岡市で開催した「全国自治体ゲームコラボレーションフォーラム」。岩手県は、ポケモンGOに先行するスマートフォン向け位置情報ゲームIngressを地域振興や観光振興に活用しようという取組を自治体としては最も早い段階から進めており、岩手を訪れる、沿岸地域に行く、街を歩くといった人々の行動を動かすような、その人々の行動の変化をゲームの力で生み出しています。魅力発信と地域の再発見という効果を生み出すソフトパワー展開の一例です。
 フォーラムでは、自治体関係者を中心に全国各地から約200人が集まり、ディスカッションを行いました。このようなフォーラムは全国初でありました。ゲームは今や社会の重要な一分野であり、最先端のテクノロジーと文化が重なるところでもあります。地域振興にも活用が期待されます。
 

《様々なチャンネルでの情報発信》

 インターネットを活用した情報発信の一例として、毎月1回、地元タレントのふじポンさんと私が出演し、インターネットのニコニコ動画で生放送している「いわて希望チャンネル」。復興の現状や岩手の魅力を発信しています。
 ニコニコ動画にはコメント機能があり、情報を発信する側と視聴者、受信する側のコミュニケーションが可能です。この双方向性に着目して、県では、平成25年11月、3年前からニコニコ動画を活用した情報発信に取り組んでいます。
 また、簡単な操作で復興情報が入手できるスマートフォン向け無料アプリ「e!いわて」があります。そして「いわて動画コンテスト」は、「コンテンツ大県」たらん岩手として、県民の皆さんにも動画制作を通じて岩手の魅力のPRに一役買っていただきたいという企画です。
 
 6年前から、岩手県知事 達増拓也としてツイッターによる発信を行っています。現時点でフォロワー数5万人以上になりました。
 今年8月に発信した「プロジェクトN」に関するツイートは、3,000を超える「リツイート」、「いいね」がありました。平成25年に放送されたテレビドラマ「あまちゃん」に主演し、岩手県民に広く親しまれている「のん(本名:能年玲奈)さん」が今年8月8日に来県していただいたことを受けて、岩手でのんさんに活躍してもらおうという内容をツイートしました。
 久慈地方産業まつりや盛岡市でのニッポンめんサミットでものんさんのゲスト出演があり、県事業であります「いわて若者文化祭2016」にものんさんにゲスト出演していただきました。
 このような話題を私がツイートしたり、あるいはリツイートして、リツイートというのは、誰かのツイートを私のツイートと同様に私のフォロワーにも見てもらえるようにすることですが、この機能こそ情報やアイデアの拡散を可能にするツイッターの肝ですけれども、このように情報を拡げていくのにツイッター等のSNSは大変有効です。
 

《東日本大震災復興動画制作プロジェクト》

 岩手県では今年度、東日本大震災津波の記憶を全国へ、世界へ、そして未来へとつないでいくドキュメンタリードラマを制作します。監修の作家 高橋克彦さんをはじめ、岩手ゆかりの制作関係者が一堂に会し、先月17日に制作発表会を行いました。
 震災の記憶を風化させず、被災者の心の復興を進めるためにも、大震災で被災された方々にも参画していただき制作を進めていきます。
 

《いわて三陸復興フォーラム》

 先週土曜日、12月3日に、5回目となる県外報告会「いわて三陸復興フォーラム」を長野市で開催しました。
 東日本大震災津波からの復興に当たり、県外さらには海外の皆さんと共に、開かれた復興として取り組むこと、そして防災、減災について広く共有し、将来に起こり得る大規模災害に備える連携の輪を広げていくこともソフトパワー戦略であろうと考えています。
 

(2)県政各分野での取組

《岩手の地域医療》

 事程左様に行政のあらゆる分野にソフトパワー戦略を適用することが効果的です。さらにいくつか紹介していきますが、まずは保健福祉分野からです。
 岩手県では、平成20年度から、県民自身も医療の担い手であるという認識のもとに、自らの健康は自分で守ることや症状や医療機関の役割に応じた受診行動を呼びかけるなど、県民一人ひとりが地域の医療を支える県民総参加型の地域医療体制づくりを進めています。
 平成21年度から、医師の地域偏在、診療科偏在の解消に向けて、国に対して地域医療再生のための総合的な政策の確立を図る「地域医療基本法(仮称)」について提言を継続的に行っています。
 平成22年度には本県独自に地域医療基本法の草案を作成しました。平成25年度には東京で地域医療再生シンポジウムを開催し、地域医療基本法の制定を提言、平成26年度には有識者との対談を行い新聞雑誌を通じた広報活動を実施しました。今年度も、日本病院学会で私が講演を行うなど、持続可能な医療体制の構築に向けた発信を行っています。
 ここで、昨年度制作し、県のホームページで公開している動画「地域医療の再生に向けて」を御覧ください。(動画は岩手県ホームページから御覧いただけます。)
 地域医療は、私たちの健康を守るためのいわば砦のようなもので、地域医療が疾病の予防・治療、療養・介護、子育て支援など幅広い分野で適切に機能することが地方自治には不可欠です。引き続き「県民みんなで支える岩手の地域医療推進会議」を中心に県民総参加型の地域医療体制づくりを進めていきます。
 

《総合的な障がい児療育の推進》

 医療・福祉・教育が一体となった総合的な障がい児療育の拠点となる「岩手県立療育センター」が平成29年秋に完成の予定です。岩手県の障がい児療育の拠点として、超重症児等の受け入れなど新たなニーズに対応するための機能・体制を強化し、障がいのある子どもの教育環境の充実も図ります。
 文字どおり全ての県民が地域で共に生きることができるようにするための医療・福祉の充実は、岩手県かくあるべし、岩手県民かくあるべしというメッセージでもあります。
 

《雇用対策・働き方改革》

 次に、商工労働観光分野です。雇用対策と働き方改革、やりがいと生活に必要な所得が得られる仕事を創出し、岩手で働き、岩手に住んでもらえるよう、県では、産業団体や教育団体等が一緒になって若者や女性等の県内就職を促進すべく、今年2月、官民による推進組織として「いわてで働こう推進協議会」を立ち上げました。
 協議会では、専用ホームページを開設するなどして様々な情報を発信しているほか、優良な取組を行う企業を表彰する「いわて働き方改革アワード」の創設など、働き方改革運動を県内全域に広げています。
 岩手への新たな人の流れを創り出すためのこのオール岩手での取組は、岩手の魅力を県内外に発信するものでもあります。
 

《若者・女性の活躍支援》

 若者・女性の活躍支援の取組の一つ、いわて若者文化祭は、文化芸術の持つ創造性と若者の活力を融合させ、参加する若者同士や彼らを支援する幅広い世代を結びつける取組です。
 若者が日頃培った文化芸術の発表と交流の場を提供し、若い世代による文化活動をより活発にして地域の魅力向上や情報発信力の強化を進めます。若者が主役となる新しい形の地域振興です。
 
 次に、女性の活躍支援の取組について紹介します。子育てを終え、再就職を希望する女性は、職から離れた期間が長く、また、職業能力開発を受ける機会が少ない状況にあります。企業においても、子育てや介護をしながら働く女性が、育児・介護休業を取得しやすく、職場復帰しやすい職場づくりを進めることが必要です。
 県では、県内の経済団体等で構成する「いわて女性の活躍促進連携会議」を設置し、岩手労働局などの関係機関と連携しながら就業に必要な技術講習等を実施しているほか、ワークライフバランスに取り組む企業の支援を行っています。
 また、岩手県内の畜産分野、アパレル分野、製造業の分野でそれぞれ女子会が発足し、女性たちの仕事の向上につなげています。
 今年9月、県では、庁内に知事を本部長とする「女性活躍推進本部会議」を立ち上げました。雇用・労働分野、農林水産分野、保健福祉分野といったあらゆる分野で女性の活躍支援を進めるための横断的な取組を推進するものです。今後、連携会議に、就業促進、子育て支援等のほか、「けんせつ小町部会」や「防災部会」など特徴的な部会を設置し、関係団体とも連携して取組を進めます。
 若者・女性活躍支援、これもまた、岩手県かくあるべし、岩手県民かくあるべしというメッセージ性の強い政策分野であると思います。
 

《ものづくり振興》

 次に、ものづくり振興です。企業が収益力を高めるためには、生産現場におけるカイゼン活動や新たな技術の導入による製造工程の効率化、付加価値の高い製品の開発が重要です。
 県では、ものづくり分野における三次元デジタル技術の高度化に対応し、三次元設計開発人材の育成や3Dプリンタ等活用研究会の設立など新たな技術導入を進める企業を支援してきました。
 北上市にあるいわてデジタルエンジニア育成センターに続き、7月には県工業技術センター内に「次世代ものづくりラボ」を開設するなど、今後も三次元プリンタの高機能化やAI、IoTの普及などの技術革新の進展に的確に対応し、企業のものづくり革新への取組を支援していきます。
 
 また、企業や専門家による従来型のものづくりだけではなく、一人ひとりが物の作り手、すなわち「メイカー」になる、ものづくりの新たな潮流「メイカームーブメント」への県民参加を促進します。
 アメリカの西海岸から始まり世界中に広がっているムーブメントですが、ICT、情報通信技術や3Dプリンタなどのデジタル工作機器の進化によって、子どもから高齢者まで誰もが先端的なものづくりを行うことができるメイカーになれる時代が到来しています。個人のアイデアを形にして共有することで、創造性や多様性を高め、世の中を豊かにしていこうという志をもって地域からイノベーションを創出していきます。
 12月10日には、盛岡市のマリオスで「メイカー塾」キックオフイベントを開催します。私も参加しますが、岩手にメイカーの世界への入り口を大きく開けるイベントですので、子どもからお年寄りまで皆様の御来場をお待ちしています。
 

《農林水産振興》

 次に農林水産分野です。先の希望郷いわて国体・希望郷いわて大会においては、選手、役員、関係者の皆さんに県産食材をふんだんに使用した「希望郷いわておもてなし弁当」を用意しました。
 安全・安心で高品質な農林水産物のブランド化を推進し、6次産業化も進めることで付加価値を高め、新たな雇用、所得の更なる向上をもたらします。このようないわゆる「里山資本主義」的な地方発の内需拡大型経済構造改革を、岩手県では「アマノミクス」と呼んでいて、復興やふるさと振興を進めていく上での政策の基本であると考えています。
 
 今年10月、県産オリジナル水稲新品種「銀河のしずく」が市場デビューしました。日本穀物検定協会の27年産米食味ランキングでは、参考品種ながら県独自品種として初めて最高評価「特A」を獲得しました。また、去る11月21日、日経トレンディ誌が主催する「米のヒット甲子園」の最終審査で“今一番食べてほしい米”として「銀河のしずく」が見事大賞に選ばれました。売れ行きは大変好調で、来年はさらに作付面積を拡大します。
 PRポスターには、岩手出身で2016ミス・インターナショナル日本代表の山形純菜さんに登場してもらいました。世界で活躍する山形純菜さんと岩手のイメージを結び付けてPR効果を高めています。
 そして、来年、平成29年産からは、新たに「金色の風」のデビューも予定しています。(12月8日名称・ロゴマーク発表)これらオリジナル新品種のブランド化をけん引力にし、岩手県産米の評価・知名度をさらに向上させ、岩手の農林水産業全体のイメージアップにつなげていきます。
 
 林業分野もソフトパワーの発揮のしどころです。県内では大規模な木材加工施設が稼働し、また木質バイオマスエネルギーの進展もあり、木材需要が増加している状況にありますが、林業就業者数はピークの頃より大きく減少して推移してきており、60歳以上の方が4割以上を占めています。
 そこで県では、研修型の人材養成機関「いわて林業アカデミー」を来年から開講します。林業の現場では、最先端の繊維素材で作られたユニフォームに身を包んでチェーンソーを使い、山の現場では、映画トランスフォーマーのロボットのように動く高性能機械で材木をどんどん切り出す若者たちが活躍しています。
 また、釜石市では、東日本大震災津波後に定住して、釜石市の復興支援団体である釜援隊メンバーになった若い女性が森林組合に入り、国際金融グループバークレイズと連携した林業スクールを設立・運営しています。
 

《国際戦略》

 次に、国際戦略です。県では、現在、次の3つを柱とする国際戦略の策定を進めています。
 1つ目の柱は「海外市場への展開」。安全・安心で品質やおいしさに優れた岩手県産の農林水産物のブランド化を進め、継続的かつ安定的な販路を確保し、南部鉄器等の岩手ブランドを県産品全体の販路開拓に生かしていきます。
 2つ目の柱は「外国人観光客の誘致拡大」。岩手県を訪れる外国人観光客のうち、最も多い台湾を最重点とし、実績のある香港、韓国、中国などの東アジアを重点市場と位置付けて、各市場のニーズに応じたプロモーションを展開し、外国人観光客の誘致拡大を図ります。
 3つ目の柱は「人材ネットワークの強化」です。岩手とゆかりのあるビジネス関係者や元留学生等と連携を図り、岩手と世界をつなぐ人材とネットワークの構築を強化していきます。
 12月1日から来年3月15日まで、フランス・パリの「メゾン・ド・サケ」において、岩手の日本酒や加工食品、南部鉄器、漆器などを常設展示、また現地レストランやシェフへの販売促進活動を展開します。
 「メゾン・ド・サケ」は、日本各地の特産品などをパリから発信する施設です。昨年の食をテーマとしたミラノ万博への参加に続いて、食の都パリで高い評価や信頼を獲得し、岩手の食品や伝統工芸品等の世界におけるブランド力を高めていきたいと考えています。
 

《三陸地域の総合振興》

 次に、三陸地域の総合振興です。三陸地域は、風光明媚な自然景観に加え、地形・地質学的にも貴重な場所であり、平成25年9月に震災遺構を含む三陸ジオパークが日本ジオパークに認定されました。この三陸ジオパークをはじめ、三陸復興国立公園やみちのく潮風トレイルなど、多彩な資源で岩手の魅力や震災の教訓を積極的に発信していきます。
 
 三陸鉄道は、平成26年4月、震災から3年という早い段階で北と南の路線で全線運行を再開させることができました。運休中のJR山田線宮古-釜石間は、運行を三陸鉄道に移管することとし、昨年3月に復旧工事が始まり、ラグビーワールドカップ2019TMが釜石で開催される平成31年の開業を見込んでいます。
 三陸鉄道が沿岸の北から南まで一つに結ばれるほか、復興道路等の整備が急速に進み、そして宮古港と北海道室蘭港を結ぶ新たなフェリー航路が平成30年に開設されることが決定しています。産業や流通、交流人口の拡大を支える新たな交通ネットワークの整備が進んでおりまして、その中でも、ドラマ「あまちゃん」で知名度を高めた三陸鉄道は重要なキャラクターとして活躍が期待されます。
 
 県では、今年度、関係機関と連携して三陸DMOセンターを開設しました。これは、三陸地域の復興のその先を見据えた地域振興の推進のため、地域のシンクタンク、官民協働のプラットフォーム、そして地域をけん引する事業の推進役としての役割・機能を持たせ、三陸地域の総合的な振興を戦略的に進めるものです。
 当面は、震災語り部の体験談を聞く復興ツーリズムや、三陸の大地の成り立ちを学ぶ三陸ジオパークなど、地域資源を生かした教育旅行等の誘客を推進し、国内外との一層の交流拡大を図りながら地域の活性化に取り組んでいきます。
 そして三陸鉄道一貫運行という一つの節目、平成31年、2019年に「三陸防災復興博(仮称)」を開催すべく三陸DMOセンターを中心に準備を始めています。
 

《ILC国際リニアコライダー》

 あらゆる政策分野におけるソフトパワーの展開の最後は、次世代の素粒子物理研究施設「ILC国際リニアコライダー」です。国際プロジェクトとして岩手県北上山地が候補地となっているILC国際リニアコライダーは、全長31~50kmの地下トンネルに建設される加速器を中心とした大規模研究施設です。電子と陽電子をほぼ光の速度で衝突させて宇宙誕生直後の状態を再現し、物質の根源や宇宙創成の謎を解明します。
 ILCが実現すれば海外の研究者やその家族など地域での受入れは数千人に及ぶことが想定されています。今年6月には、東北ILC推進協議会総会で「東北ILC準備室」を設置することが決定されるなど、地元の受入体制の準備を進めています。
 昨年6月のILCに関する国の有識者会議の提言を踏まえますと、政府のILC国内誘致の可否判断は、早ければ平成29年から30年と考えられることから、現在、極めて重要な時期を迎えています。
 
 今ちょうど盛岡市内で、ILCの研究者が集う国際学会「LCWSリニアコライダーワークショップ2016」が開催されています。リニアコライダーワークショップは、国際共同研究を推進するリニアコライダーコラボレーションの主催で、北米、アジア、欧州の持ち回りで年に1回開催されている国際学会です。ILCに関する世界中の研究者らが一堂に会して最新の研究や技術について発表し、熱い議論を交わしています。
 県では、リニアコライダーワークショップに参加する研究者にILC建設候補地の状況やILC実現に向けた東北の様々な取組を紹介し、地元の熱意を伝えるとともに、ILC実現に向けた機運を一層高め、そして、岩手のソフトパワーを世界に発信する機会にしていきたいと考えています。
 これはLCWS2016のポスターですが、超伝導加速器の筒を連ねたものを銀河鉄道に見立てて、その先から素粒子のビームを発射してその先で衝突、宇宙誕生、ビッグバンが再現されているという絵が岩手山を背景に描かれています。これが会場のあちこちに貼られており、またインターネットでも見ることができます。
 

《岩手県職員憲章》

 ソフトパワーは文化的魅力と道義的信頼からなるわけですが、県組織、県職員の信頼を得、高めることもいわてソフトパワーにとって重要です。
 平成20年に不適切経理問題が生じ、改めて県職員の法令遵守などが深刻な課題となったとき、「職員憲章」がつくられました。その策定に当たっては、県庁内のインターネットの掲示板機能を使って県職員自らの意見を出してもらい、それを集約して「県民本位」、「能力向上」、「明朗快活」、「法令遵守」、「地域意識」という岩手県職員憲章「私たちの5つの信条」をつくりました。
 年頭の知事訓示など、私も含め折に触れ県職員の間で確かめ合い、誓いを新たにしています。

おわりに

 おわりに、岩手の幸福に関する指標の策定に向けた取組を紹介します。
 今の岩手県の総合計画、いわて県民計画は、平成21年から平成30年までの10年間の計画で、あと2年ちょっとの間に次の総合計画を策定しなければなりません。
 現行計画がつくられた頃は、日本全体の長期経済停滞が地方を著しく疲弊させ、岩手でも雇用の低迷、県民所得の低迷、人口流出の増大が深刻で、リーマンショックがそれに追い打ちをかけていました。それ故、経済的な危機の克服を強調する内容の計画になったと思います。
 その後、東日本大震災津波を経験し、復興を進めながら岩手県民は県民所得の向上や雇用の改善を成し遂げ、一方で、人の生き死にに関わるような深い価値を見つめてきました。
 経済成長は、必ずしも人々の幸福とはつながっていないとの研究結果もあり、物質的な豊かさだけではない様々な要素に着目することが重要とも考え、「岩手の幸福に関する指標」を策定することとしました。
 先月11月4日に「岩手の幸福に関する指標」研究会の中間報告書を公表しています。この中間報告では、幸福に関連する領域として家族や健康など非経済的要素が盛り込まれているほか、主観的指標と客観的指標で構成するとするなど「岩手の幸福に関する指標」について体系的に考え方をまとめていただいています。
 その中では、「岩手らしさ」として、「つながり」を表す新たな指標としてソーシャル・キャピタルや協調的幸福感などを提案いただいています。ソーシャル・キャピタルというのは、人付き合い等のつながりの度合いを把握しようとするものであり、また協調的幸福感というのは、他者の幸福が自らの幸福にどのような影響を与えるかを捉えようというものです。
 「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という宮沢賢治の言葉が広く共有されている岩手ならではの幸福像を描くことができればと思っています。今後、幸福に関連する新たな設問を取り入れた県民意識調査も実施しながら次期総合計画に向けた検討を進めていきます。
 
 幸福の問題は雲を掴むような話で、果たして行政が取り組むのにふさわしいのかと思う向きもあるかもしれません。しかし、日本国憲法第十三条には、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利が明記されていて、これはアメリカ独立宣言にも記されているものです。
 デモクラシーの原点、立憲主義の要である幸福追求権をしっかり踏まえ、その地域、その時代なりの幸福追求を工夫していくことは、地方自治、地方行政においても重要であろうと考えます。今、日本で立憲主義が動揺し、世界でデモクラシーが危機に直面している中で、自由と民主主義を本質から理解し、それを守ろうとする姿勢を岩手県が示すことは、大きなソフトパワーになるのではないでしょうか。
 
 以上、ソフトパワーという視点から岩手県の取組を様々紹介してきました。中でも、今般の希望郷いわて国体・希望郷いわて大会の成功が、自信と誇り、そして希望を岩手県民に与え、そのレガシーはソフトパワーの大きな源泉となるでしょう。
 今後の県政運営においても、ソフトパワー戦略の考え方や視点を重要な行政運営上の方策として位置付け、岩手県の文化的魅力と道義的信頼を高めながら、復興とふるさと振興を力強く推し進めてまいります。
 御清聴ありがとうございました。

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